ローソンとアサツー ディ・ケイ(以下、ADK)、NTTドコモの合弁会社 クロスオーシャンメディアは5月19日、ローソンの店頭での双方向通信を実現するデジタルサイネージ事業「東京メディア」を5月29日より開始すると発表した。

クロスオーシャンメディア 代表取締役社長 市原義文氏

「東京メディア」は、ローソンの店頭の外側に46インチのディスプレイ2台と指向性スピーカーを設置し、広告やキャンペーン情報などを配信する事業。同事業ではFelica機能を持つ携帯電話との連携が特徴となっており、来店者はディスプレイに表示された商品のクーポンやキャンペーンの詳細情報などを取得することができる。

同事業の発表会に際してローソン出身のクロスオーシャンメディア 市原社長は、「この事業は(ローソン時代の)2008年5月から検討が開始されていたもので、2009年7月の実証実験の結果を踏まえて開始されるもの」とし、客数・売上の減少といった小売店における現状打開策の1つとして開発が行われていたという経緯を明かした。

「東京メディア」ローソン店頭での展開イメージ

同事業は広告売上による収益モデルがベースとなるが、市原社長は「ありがちなパターンではあるが」と前置きしながら、「3年目で黒字に転換し、5年目には累積損失を解消する」といった事業計画を公表。初年度の売上目標は約4億円とされ、1年目には都内300店舗で展開し、4年目には大阪や名古屋地域に事業の対象エリアを拡大する。

クロスオーシャンメディアは上述の通りローソン(出資比率42%)とADK(同38%)、NTTドコモ(同20%)の合弁会社だが、「東京メディア」の事業には、広告やコンテンツ、ハードウェア、インフラ提供といったそれぞれの領域で、その他の事業者も参画することになる。

「東京メディア」の参画企業

同事業で使用されるディスプレイは「長時間稼働に耐えうる放熱設計とコストの両面を踏まえて決めた」(市原社長)とされるサムスン製のものとなっているが、市原社長は「条件さえ合えば(国内メーカーも含めた)他社製のものに切り替わる可能性もある」と語った。

また、コンテンツ配信などのインフラ構築・運用は日立製作所が担当。この点について市原社長は「鉄道事業者向けのソリューションで実績があること」が決め手となって日立製作所に委託することになったとしている。

なお、同事業では将来的に「AR(Augmented Reality: 拡張現実)」を広告媒体化することも想定されており、発表会ではイメージデモの実演が行われた。さらに市原社長は「多くの人が、店内の時計を見るためにコンビニを覗いている」という実態を踏まえ、「実は"時報"が同事業における目玉コンテンツの1つになる」という考えを示した。

「AR(拡張現実)」を利用したイメージ

「時報」コンテンツのイメージ

同事業の将来像について市原社長は「コンテンツ配信だけにとどまらず、アーティストなど隠れた才能を発掘するための"発表"の場にするなど、プラットフォームとしても提供したい」としている。