三菱電機 執行役

三菱電機は5月17日、2010年度および2011年度の2年間で約70億円を投資し、スマートグリッドの実証実験を開始することを明らかにした。

これは2020年以降の送配電網を想定したスマートグリッド実証実験設備を自社内に構築しようというもので、2020年以降の送配電網を想定したスマートグリッド実証実験設備を自社内に構築、自社設備の活用によるスマートグリッドに関する技術の早期確立および製品化を狙うほか、生産時CO2排出量の削減や発電時のCO2削減など、環境ビジョン2021での目標達成要件に向けて、「三菱電機としての取り組みを強化するもの」と、同社執行役社長の山西健一郎氏は説明する。

低炭素社会の実現に向け、三菱電機としての取り組みを強化するのが今回の実証実験の狙い

同社がスマートグリッドに対する事業を強化する背景には、再生可能エネルギーの活用推進施策が世界各国で進められている反面、太陽光発電や風力発電などは発電量が一定でなく、かつそれをコントロールすることが難しいため、高い信頼性を維持した電力供給の実現が求められている、ということがある。

同社は自社を、「こうした要求を実現するためには、"余剰電力の発生"、"周波数調整力不足"、"周電系統電圧上昇に対する対策技術"の3つの重要課題を解決する必要がある。三菱電機は、発電所などの"基幹系"、発電所で発電された電力を送配電する"配電系"、そして家庭内でそれらの電力を活用する"需要家系"の3つすべてを有しており、それら全域にわたる再生可能エネルギーの大量導入による系統の変化を"実地"で技術的に分析、実証できる稀有な企業」(同)としており、全社プロジェクトとして取り組み、総合力を発揮することで、スマートグリッドによる電力の安定供給を実現することを目指し、対応機器とシステムの開発および検証、そして全系統における知見の習得を狙うという。

再生可能エネルギーを活用しようとすると、発電量の変動への対応が必要となってくる

スマートグリッドの活用イメージ

実証実験の対象となる地域は、「尼崎」「和歌山」「大船」の3拠点で、このうち、製作所と研究所が存在する尼崎地区がメインの実験場となり、基幹系システム、配電系システム、需要家システムの3つを組み合わせ、「送配電網の将来像を想定した電力流通システム全体にかかわる実証」が行われる。また、和歌山地区は尼崎地区と連携し、配電系システムと需要家システムを活用した「太陽光発電システムに関する広域監視の実証」が行われ、大船地区では、こちらも配電系システムと需要家システムを組み合わせた「実証ハウスを設置し、システム連携によるエネルギー管理の実証」が行われる計画。いずれも2010年度は、それぞれの地区ごとの設備構築が行われる計画で、そのうち一部が実証実験を開始する計画で、2011年度に実証実験を本格化させるとしている。

実証実験の対象となるのは「尼崎」「和歌山」「大船」の3地区。それぞれ異なる実験が行われる

それぞれの地区に設置される設備やシステムとして、尼崎には同地区全体の必要電力の1/10を賄うことが可能な4MWのメガソーラーシステムや可変速揚水発電模擬装置などの模擬配電系設備や家屋における太陽光発電システム、エコキュートなどの設置に加え、自動検針システム、需給制御システム、配電制御システム、電気自動車、通信ネットワークなどが設置される。また、和歌山地区は尼崎地区との連携を前提とした太陽光発電システムが設置され、大船地区には実証ハウスにおける自動検針システム、太陽光発電システム、ホームゲートウェイ、オール電化機器、蓄電池、電気自動車、セキュリティシステムなどが設置され、電気自動車へ昼間の間に蓄電を行い、夜間にその電力を家庭内で活用するといったことも試みられる予定となっている。

各地区に用いられるシステム・機器の概要と実証実験イメージ

同社では、こうした実証実験で得た各種ノウハウを、国内は元より、海外向けに、「再生可能エネルギーの大量導入」「インフラ整備/増強型」「コミュニティまるごと型(インフラ運用を含めたパッケージ)」の3パターンを前提にして各地域ごとの需要に応じた形で提供を図っていくとしており、技術やノウハウの蓄積により、「将来求められるあらゆることを想定した実証実験を進めていくことで、低炭素社会の実現に向けた新たな技術開発に結び付けたい」(同)と意気込みを見せている。

実証実験によって得た知見は国内のみならず、海外に向けた事業展開でも活用が期待されている