ルネサス エレクトロニクス MCU事業本部・水垣重生事業本部長 |
ルネサス エレクトロニクスは2010年5月13日、マイコン事業について新しいビジョンと戦略に関する説明会を開催し、同社MCU事業本部・水垣重生事業本部長から、同社のマイコン事業の位置づけとマイコン市場におけるポジショニングが示された。
ルネサス エレクトロニクスでは、マイコン事業を、SoC、アナログ&パワー半導体とともに事業の柱と位置付けており、2010年3月期の同社売上高の35%を占めている。
現在、CPUコアとしては、旧ルネサス テクノロジが行っていたR8C、RX、SHの3種類、旧NECエレクトロニクスが行っていたV850、78Kの2種類、合計5種類をラインナップしており、多様な周辺回路も含めてハイエンドからローエンドまで幅広い要求にこたえられるようにしている。また、400社を超える開発ツールやミドルウェアのパートナーと提携、同社とともに、ソフトウェア開発のための環境を整備している。
このようなハード、ソフト両面の整備により、同社は2009年のMCUランキング(Gartner調べ)で、世界市場シェアの30%を占めるトップメーカとなっており、32ビット、16ビット、8ビットそれぞれの製品分野でもトップシェアを占めている(図1)。
今回、このマイコン事業をさらに強化していくために、新しい事業ビジョンとして「Global&Green」を発表した。同ビジョンは、グルーバルな事業成長を目指した地域別最適ソリューションの提供(Global)、およびエコ社会の実現へ貢献する低消費電力マイコンや高度な技術の推進(Green)を目指すものである(図2)。
このビジョンに基づいた各種施策を今後立案・遂行することにより、2010年3月に累計38億5000万個であったフラッシュマイコンの出荷数量を、2011年3月には50億個、2015年までに100億個にまで拡大する計画である(図3)。また、海外売上比率を現在の5割から2年後には6割へ拡大していく方針である。
ルネサス エレクトロニクス MCU事業本部・岩元伸一副本部長 |
「Global&Green」ビジョンについての詳細は、同事業本部・岩元伸一副本部長から説明された。
Globalな事業展開においては、日本や欧米などの先進国では、システムのより高度なインテリジェント化へ向けての質の向上を進める。一方、新興国では、電子化の発展による数の向上への対応を進めていく。
質の向上の例として、歩行者/白線認識や先行車自動追随といった高度な機能を搭載した衝突を防止する自動車を挙げ、このような高付加価値を提案する半導体製品や技術の開発、ユーザーへの提供を進めていくとした。
中国をはじめとする新興国においては、自動車や家電などの市場をターゲットと定め、マイコンによる電子制御を提案していく。中でも中国に対しては、マイコンおよびパワー半導体を一括してユーザーへ提供するキット販売や、現地デザインハウスとの連携を推進することにより、新しいユーザーニーズにこたえて行くとする(図4)。
同社は中国では今後の需要増に対応するために、後工程の新工場建設を進めており、2010年度末までの稼働開始を予定している。中国市場においては、量的の拡大しているだけでなく、要求されるパッケージ性能も欧米の顧客並のレベルとなっており、アセンブリ技術も同市場における競争力につながるとしている。
一方のGreenでは創エネ、省エネ、畜エネに対応したソリューション、デバイスの提供を進めていく。現在、電力を効率的かつ安定的に供給する通信・IT技術を駆使した電力網、いわゆるスマートグリッド(Smart Grid)の構築やハイブリッド車・電気自動車の普及が進みつつあるが、これらの分野の要求にこたえるため、マイコン、システム技術の提供に注力していく。例えば、エアコンや冷蔵庫などの低消費電力化に大きく貢献するインバータ制御機能を搭載したマイコンの提供や、電力メータを軸に家庭内で効率良く電力制御を行うスマートホーム向けの各種技術を提供していく(図5)。