富士通フォーラム 2010の初日に開催された「クラウド環境を支えるストレージ・ソリューション」と題するセミナーでは、サイロ型システムからクラウド環境へと移行する際に発生するさまざまな課題に着目し、運用効率化や事業継続を支援するストレージソリューションに関する説明が行われた。
講師を務めた富士通のストレージシステム事業本部 ストレージインテグレーション統括部 統括部長 熊沢忠志氏は、「クラウドに対しては、業務の標準化や開発スタイルの標準化といった成果とともに、オフィスに分散化したIT資産を一括管理できるようになることでのガバナンスの強化、コストダウンといった期待が高まる一方、大量データ処理の性能保証や、セキュリティおよび信頼性の確保、または技術/運用の連続性といった点で課題が指摘されている。こうした不安を払拭するには、クラウドを構成する技術やコンポーネントにおける実力や実績を見極めることが大切。富士通が提供するクラウド関連技術は、これまでに実績がある技術をそのまま生かせるもの。またICTインフラ仮想化、ICT運用自動化といった仕組みによって、クラウドシステムの運用課題の解決を図れる」などとした。
また、ストレージの要素技術として、プロビジョニング、階層管理、スケールアウト、重複排除、サイトリカバリなどをあげ、「これらの要素技術は、クラウドコンピューティングを支える要素技術としても使えるものになる」とした。
こうしたクラウドを取り巻く状況を解説したのちに、熊沢統括部長は、クラウドを支えるテクノロジーとして、
- 容量の最適化
- 統合、プロビジョニング
- 仮想化ストレージの活用
- セキュリティ
- 事業継続
の5つの観点から、富士通の具体的な技術/製品/サービスなどに触れながら説明を行った。
コスト削減、省電力化では、ETERNUSで採用しているエコモードについて触れ、バックアップ時のみディスクを回転させることで省電力化を実現するほか、ポリシーによる最適配置により、アクセス頻度の低いファイルをエコモード機能を設定したボリュームに移動させることで無駄な電力を抑制できる技術などを紹介。「エコモードによって、5時間のみディスクを回転させた場合、従来比で15%の消費電力の削減が可能になる。ドライブごとの特性を生かして、SSDのような高アクセス性能/低消費電力を実現するストレージと、ニアラインディスクのように大容量/低コストのストレージを、用途によって使い分けるという点でも活用できる」などとした。
Oracle Database 11gのMOVE PARTITIONにおける情報ライフサイクル管理にエコモードを活用した例では、高性能を優先するストレージにはアクセスの多いファイルを置き、1年以上前に蓄積されたデータであり、アクセス数が少ないファイルは、コストパフォーマンス優先のストレージに格納するといった切り分けた形での利用が可能になるとした。
統合、プロビジョニングでは、富士通が3年前から提供しているシン・プロビジョニングについて解説。この技術を活用することで、システム構築には不可欠だった事前の容量見積もりが不要になり、物理ディスクのスモールスタートを可能にできることなどを特徴として示した。「サーバに大容量の仮想ディスクを割り当てることで、必要なときに必要な分だけ増設できるようになる。また、Veritas Storage Foundationとの連携により、仮想ディスク上でデータを削除した際にも、物理ディスクのデータも削除し、物理ディスクの領域解放が可能になる」という。さらに、デデュープ技術を活用することで、重複データのバックアップ量の削減が行える重複排除機能も、クラウド環境では有効な技術になるとした。
仮想化ストレージの活用では、複数あるストレージ装置内のディスクを仮想ストレージプールとして一元的に管理。サーバに対して柔軟にディスク容量を割り当てる「ETERNUSバーチャライゼーション・ストレージ」と、小規模構成から導入して運用中の仮想ストレージをスケールアウト拡張できる機能を説明。「それぞれを近いうちに提供できる」とした。
さらに単一論理ビューでのアクセスを実現する「Global Name Space」や、F5 ARXシリーズを利用してファイルサーバを意識することなくデータ管理業務を継続できる機能、1台のETERNUSディスクアレイをSAN/NASの両環境で使用できるストレージ共用などの技術を説明した。
セキュリティに関しては、ストレージ管理とボリューム管理で権限を分離し、ストレージ装置外部からの不適切な侵入の監視や、管理ログの保存を行うほか、自動的にゾーニングを行い、管理者の負担を削減できる機能を提供しているとする。
事業継続の観点では、高速バックアップやサイトリカバリの機能により、「業務ボリュームのデータを短時間で同じディスクアレイ内の別のボリュームにコピー。複製ボリュームを使用することで業務を継続しながらテープ装置へバックアップすることができる。また、リモート・アドバンスト・コピー機能により、遠隔地のバックアップサイトに常時転送するディザスタリカバリ環境を構築することができる。これらの機能は、クラウド環境でも有効に活用される機能になる」と語った。
一方で熊沢統括部長は、クラウドの実現に向けては、仮想化→自動化→全体最適化というステップを踏むとし、その実現に向けて、見える化、標準化、統合/仮想化、自動化という4つの観点から技術を採用する必要があると語る。「個別ITインフラを統合/仮想化することで、まずはリソースの有効活用が可能になる。それをベースに、管理者を不要とする自動化によって、オペレーションコストの低減、迅速かつ確実な運用が可能になる。そして、最後のステップとして、全体最適化によるクラウドの運用フェーズへと入ることになる」という。
見える化においては、ストレージの消費電力、ディスクの回転状態の可視化や、性能トラブルの予兆監視といったサービス、「標準化」では、ETERNUS SF Storage Cruiserを使用することで、少ない入力項目により最適な構成を自動生成。さらに、1台目のストレージ設定情報を複製し、2台目以降のETERNUSディスクアレイへ一括設定し、作業時間を大幅に短縮できる機能などを説明した。
さらに、統合/仮想化では、SANやNASによる仮想統合環境やシン・プロビジョニング機能などを提供する各種ストレージ製品や、ストレージ管理ソフトウェアのETERNUS SF、サーバの自動化、可視化ソフトウェア「ServerView Resource Coordinator VE」などの仮想化基盤となる製品群を取り揃えていることを示した。
また自動化においては、「ダイナミックリソース管理のServerView Resource Orchestratorにより、物理サーバ、仮想サーバ、ネットワーク、ストレージを一元管理、クラウド環境のリソースを適材適所に配分できる」と語った。
そのほか、熊沢統括部長は、「スイッチや各種ゲートウェイを仮想化して利用できるバーチャルアプライアンスの活用も今後の課題であり、将来的には、ETERNUSをバーチャルアプライアンスとして提供することができるかもしれない」と今後の可能性についても触れた。
最後に熊沢統括部長は、「クラウドへの一連の流れのなかで、見える化、標準化、統合/仮想化、自動化というすべての領域において、富士通はストレージソリューションを提供している。クラウド環境に対応したストレージインフラを取り揃えている」と、クラウドに向けた技術、製品、サービスをラインアップしている強みを強調した。