5月13日と14日の2日間、東京国際フォーラムにおいて富士通主催の年次イベントである「富士通フォーラム2010」が開催される。期間中には全111カリキュラムのセミナーと約150種の展示デモが予定されているが、中でもクラウドコンピューティングおよびにそれを支える富士通のストレージソリューションについては、マイコミジャーナル エンタープライズチャンネルでも日ごろから重点的にお伝えしているテーマのひとつである。
本稿では、展示ホール(B2F)において行われる展示デモのうち、ディスク資源の仮想化によってさらなるコスト削減を実現できる仮想化ソリューション展示について紹介する。富士通のサーバソリューションでは、仮想化環境の導入によってCPUやメモリなどのリソースを最適化することが可能になり、大きなコスト削減効果を獲得することに成功した。今回同社が提案する新しいソリューションでは、サーバ資源に加えてディスク資源を仮想化することによって、一層のコスト削減を可能とするものである。展示ブースではシステム規模に応じた3種類のソリューションと、運用をサポートする管理ソフトウェアが動作する様子を見ることができる。
ディスク容量の仮想化が、一歩進んだTCOの削減を可能にする
企業のサーバインフラにおける近年の課題として、ハードウェアの高スペック化に伴ってCPUやメモリなどのリソースを十分に使いきれず、過剰な投資を行っているという問題があった。サーバ環境の仮想化によるリソース使用状況の最適化は、この問題を解決し大きなコスト削減を可能とする有効な手段であり、富士通のサーバ製品でも積極的なサポートを行ってきた。たとえば同社のPCサーバ「PRIMERGY」はサーバソフトウェア導入実績No.1を誇るVMwareの「VMware vSphere 4」を搭載しており、CPUやメモリ資源の有効活用を可能にするとともに、消費電力の削減を実現している。
このようにサーバ仮想化は企業のコスト削減に大きな効果をもたらすが、従来のシステムでは、仮想化の導入後もストレージに関しては仮想化前と同容量の資源を必要とするという課題が残っていた。そこでサーバ仮想化の次の一手として現在注目されているのが"ディスク容量の仮想化"である。これは物理ディスクをプール上で管理し、未使用領域を複数のサーバで共有することによって、ディスク使用率を最適化するという仕組みである。富士通の担当者によれば、ディスク容量の仮想化によって、おもに次のような効果を得ることができるという。
- 投資の最適化 - 必要な分のディスク容量を随時増設することが可能になるため、将来を見越しての余分なディスクを保有しなくてもよい
- 容量設計の簡素化 - 仮想的に大容量のディスクを割り当てることができるため、導入時に厳密な容量設計をする必要がない
- 増設作業の簡素化 - ディスク増設時にもサーバの設定を変更する必要がなく、増設作業もシステムを停止することなく行うことが可能
富士通が提供する3つの仮想化ソリューション
とはいえ、気になるのはディスク容量仮想化にともなうコストが、トータルコストの削減に見合うものであるかどうかという点である。通常は、ある程度大きな規模のシステムでなければ仮想化による投資効果を見込むことはできない。その点富士通では、システム規模や運用要件に応じて3種類のソリューションをラインナップしており、顧客の環境に合わせて最適なディスク容量仮想化を提供することができるという。
まず小規模環境向けには、VMware vSphere 4に標準搭載されている機能のみを利用したディスク容量仮想化ソリューションがある。仮想化の対象となるディスク容量は仮想サーバ(VMware vSphere 4)が利用するものに限定されるが、追加のハードウェアやソフトウェアを購入する必要がなく、安価に導入できるというメリットがある。
中規模から大規模なシステムや、仮想サーバと物理サーバが混在したシステムに対しては、同社のディスクアレイ製品「ETERNUS DX400/DX8000 series」を利用したソリューションが提供されている。ETERNUS DX400/DX8000 seriesにはディスクボリュームを仮想化するシン・プロビジョニング技術が搭載されており、物理サーバ/論理サーバ問わず、サーバが利用する論理ボリュームを仮想化することができる。無停止での物理ディスクの増設やボリューム拡張が可能であり、必要に応じた最適なディスク利用を実現できるという。
データセンターなどのより大規模な環境には、複数のストレージ装置を統合する仮想統合技術をサポートしたバーチャライゼーション・ストレージが用意されている。同製品は複数のディスクアレイを統合した仮想ボリュームを構成することができ、これによってより大規模なディスク容量仮想化を実現可能とのことだ。こちらの製品についてはまだ発売されていないが、近く正式リリースされる予定となっている。
上記3ソリューションに加え、富士通ではストレージの運用管理ソフトウェアとして「ETERNUS SF Storage Cruiser」を提供している。同ソフトウェアでは仮想化されたディスクを含むストレージシステム全体の構成状態や稼働状況を見える化し、安全で効率的な運用をサポートするとのことである。時系列での使用率の推移も確認することができるほか、ETERNUS DX400/DX8000 seriesについてはディスクプール使用率を監視して物理ディスクの増設時期を通知するなどといった機能も備えている。
富士通フォーラムの展示ブースではVMware vSphere 4を搭載したPCサーバ「PRIMERGY BX900」と、シン・プロビジョニング技術搭載のディスクアレイ「ETERNUS DX400 series」のほか、参考出展としてバーチャライゼーション・ストレージが稼働しており、これらの仕組みやTOC削減につなげる方法などについての解説が行われる。また、運用管理ソフトウェアのETERNUS SF Storage Cruiserも展示されており、デモ稼働中の仮想化ストレージの構成や状況を詳細に見ることができる。