Analog Devices(ADI)は5月12日、同社第4世代MEMSジャイロセンサ「ADXRS450」を発表した。即日サンプル出荷を開始、1,000個受注時の単価は16ピンSOICパッケージで43.16ドル、SMT互換セラミック縦型実装パッケージで57.07ドルとなっており、量産は2010年12月からを予定している。
産業機器や医療機器、ロボットなどの高い安全性や高信頼性、高精度が求められるアプリケーションにおいては、衝撃や振動、温度などが過酷な条件下でも感度やノイズ、オフセット・シフトなどの仕様を維持できることが求められる。
アナログ・デバイセズのマイクロマシン・プロダクト事業部ディレクターの永井詢也氏 |
同社のMEMS技術である「i MEMS」を活用したジャイロセンサは、対環境性が強く、バイブレーション・レクティフィケーションは、競合のハイエンド製品比で3倍の0.7°/h/g2、リニア加速度に対する感度は別の競合のハイエンド製品比で同5倍となる40°/h/gを実現している。
同社日本法人アナログ・デバイセズのマイクロマシン・プロダクト事業部ディレクターの永井詢也氏は、「慣性MEMSセンサはオートモーティブのパッシブ/アクティブセーフティでの採用の第1期、そこから民生へ派生した第2期に加え、今、産業機器や医療機器への適用に向けた第3の波を迎えつつある」とMEMS市場の動向を説明する。この2つの市場の伸びについては、iSuppliの調べによると、医用で15%程度の成長率、産業用制御およびプロセス制御用で30%超と、現在盛んに活用が進む民生品や携帯機器の10%程度の成長と比べても高い伸び率が見込まれている。
そのため「今回のMEMSセンサとしては、横滑り防止のような車体の安定化に加え、ジャイロセンサと加速度センサを入れて3次元の立体画像を表示可能とした超音波診断器のような医療機器、GPSを活用したナビゲーションそのものや、それらを応用した自動移動農機具や資材運搬車両などを想定している」とターゲット市場とアプリケーションを説明する。
同社のMEMS技術の強みは、約20年におよぶMEMS研究による幅広い加速度センサ、ジャイロセンサ、慣性計算ユニット(IMU)といった製品群と、同社の核である信号処理技術を組み合わせて提供できることにあると永井氏は説明する。このため、同社では提供形態としても、モノリシックとしての提供のほか、MEMSセンサと信号処理チップを組み合わせた2チップ構成やマルチチップ構成を実現する貫通電極技術を活用したパッケージなども提供している。
同製品は、差動クワッドセンサ構造を採用。電源を入れた状態で2,000gの耐衝撃性を実現しているほか、リニア加速度に対する感度0.03°/s/g、アクセラレーション・レクティフィケーション0.003°/s/g2、オフセット・シフト±0.3°/s(標準時)、ノイズレート密度0.015°/s/√Hz(周囲温度25℃)、消費電力6mA(typ)を実現している。
また、3.3Vのほか5Vでの動作にも対応しているほか、-40℃~+105℃での動作が可能。さらに、縦型実装パッケージを活用すれば、従来軸ごとに3枚別々の基板を必要としていた手法と異なり、1枚のプリント基板上で3軸分の構築が可能となり、3軸すべてで同一の性能を実現することができるようになっている。
「これまでADIでは車載向けや民生向けを中心にやってきたが、今回の製品を皮切りに産業機器や医療機器などにも展開していければ」(永井氏)と期待を覗かせており、日本では特に精密機器の制御やロボットの制御に加え、新幹線などの鉄道の分野にも注力していければとするほか、長い目では「まだ、日本ではロボットを活用した医療機器はあまり進んでいないのが現状だが、市場の成長に合わせて順次対応を進めていくことも考えている」(同)としている。