三洋電機は5月11日、2010~2012年度の新中期経営計画を発表。対象期間をパナソニックグループに合わせたほか、経営体質の改善や全事業の収益化に向けた施策について、同社佐野社長が説明を行った。これによると、2012年度における同社の目標連結売上高は2兆円、営業利益は900億円、営業利益率は4.5%とされている。
説明会で登壇した同社代表取締役社長 佐野精一郎氏は、経営体質の強化について強調。在庫削減や債権・債務の適正化などによって、3ヵ年(2010-2012)で約700億円のフリーキャッシュフローを創出し、先行投資に備える考えを示した。これを受けて同社は5月1日付で「経営体質強化本部」を新設した。
また佐野社長は、2010-2012年度における総投資額約2900億円のうち約6割を「エナジー事業」(太陽電池事業/二次電池事業/HEV事業)に集中投資(太陽電池事業に約500億円、HEV事業を含む二次電池事業に1200億円)することを明らかにした。
光ピックアップを中心とした「電子部品事業」や、カーナビゲーションシステムなどの「車載機事業」、デジタルカメラ/プロジェクタ/テレビなどの「デジタル事業」については「収益源事業」と位置付け、生産拠点の拡充や増産などによってさらなる市場シェアの増大を目指す。
同社のエナジー事業におけるセグメントごとの具体的な施策は以下の通り。
太陽電池事業
2012年度の太陽電池販売目標は2010年度比で225%増となる900MW(メガワット)。2015年度には1500MW(1.5GW)とし、世界でトップ3に入るメーカーとなる。この目標に向け、2010年度には21%の変換効率を実現し、コスト競争力を強化して日本・欧州での住宅市場向けの販売を拡大する。また、課題とされている業務用市場においては、外部調達も含めた商品ラインナップの拡充を行う。さらに、次世代太陽電池の開発を急ぎ、早ければ2012年度末までには量産を開始する。二次電池事業
2012年度の二次電池事業の売上高(HEV事業を含む)は約3700億円(2010年度比で123%増)。世界トップシェアを堅持するとともに、単価下落を補えるレベルにまでコスト競争力を引き上げる。また、従来比120%以上で世界最高レベルとなる高容量セルを商品化。世界的な(ノートPC等の)需要拡大に備え、生産能力を増強する。さらに、単なる"箱売り"だけではなく、業界初とされる大容量・高電圧リチウムイオン電池システム事業に対して本格的に参入する(同事業における2015年度の売上目標は約800億円)。HEV事業(環境対応車用二次電池)
リチウムイオン電池の増産やPHV(プラグインハイブリッド車)用リチウムイオン電池の商品化などによって"全方位"の販売戦略を推進。2020年度における世界での市場シェア40%を目標とする。
同説明会において佐野社長は、究極のエコとされる江戸時代の人々の知恵を生かした「スマートエナジーシステム」についてビデオを交えながら紹介。これは太陽電池と大容量の蓄電装置をネットワークでつないでシステム化するものだが、同社は現在、その核となる「SESコントローラ」の開発に注力していると語った。
また佐野社長はパナソニックとの関係についても説明を行った。太陽電池事業については「パナソニックの販売力を活用するほか、集中購買などによる部材調達におけるコストダウンを図る」とし、二次電池事業では新たな材料技術や生産技術の高位平準化への取り組みを世界トップシェア堅持の要素の1つにするという考えを示した。
空調(エアコン)については、三洋電機側は業務用空調に技術リソースをシフトし、こちらもパナソニックの販路を活用して販売を拡大していくことになる。家庭用のエアコンは今後パナソニック側に事業戦略を一元化する。
白物家電(洗濯機や掃除機、冷蔵庫など)について佐野社長は「(統合や撤退、M&Aなど)選択肢は複数ある」として具体的な施策は示さなかったが、生産拠点の統廃合については「まずは海外の拠点から実施していくことになる」と語った。
なお公式な発表内容では、2012年度における営業利益率「4.5%」はパナソニックグループ企業としての必達目標となっているが、佐野社長は「社内的には5%を達成目標としており、全役職者に対して徹底している」と語った。このギャップについて同氏は、「財務体質などの経営インフラを強化することでその差を埋めることができる」としている。