ルネサス エレクトロニクスは2010年3月期の決算概要を発表した。なお、同社は2010年4月1日付で旧NECエレクトロニクスと旧ルネサス テクノロジが合併して誕生した会社であり、今回は2010年3月31日付けまでの旧2社の数値が発表された。
旧NECエレクトロニクス(NECEL)側の通期業績は、売上高が前年度比796億円減の4710億円、内半導体の売上高は同740億円減の4519億円、営業損益は172億円改善の492億円の損失、経常損益は同218億円改善の544億円の損失、純損益は同286億円改善の564億円の損失となった。ルネサス エレクトロニクス代表取締役会長の山口純史氏は、「リーマンショック以降、2009年3月期の下期をボトムに半導体売上高、営業損益ともに改善が進んできている。年度第4四半期のみを見れば、SoC、MCU、ディスクリートそれぞれの事業で増収を達成しており、特にSoCについてはEMMAを中心としたデジタルAV向けシステムLSIが好調で前四半期比22%の成長を達成した」と説明する。ただし、固定費の削減などを進めたが、需要の回復が単価の低いデバイスに集中するなどした結果、営業黒字化には至らなかったとした。
一方の旧ルネサス テクノロジ側の通期業績は、売上高が前年度比1029億円減の5998億円、内半導体売上高は同666億円減の4974億円、営業損益は同326億円改善の640億円の損失、経常損益が同319億円改善の709億円の損失、純損益が同1219億円改善の813億円の損失となった。
これにより、両社の実績を単純合算した値は、売上高が前年度比1538億円減の1兆624億円、内半導体売上高は同1337億円減の9409億円、営業損益が同497億円改善の1133億円の損失、経常損益が同537億円改善の1253億円の損失、純損益が同1506億円改善の1378億円の損失となる。なお、旧NECELと旧ルネサス テクノロジを合算した値と若干異なるのは、旧ルネサス テクノロジ側の売上高およびう半導体売上高について、合併における会計処理の変更の影響によるものとしている。
なお、同社は今回の決算発表に併せて経営目標などの開示も行った。基本的な経営目標は3つあり、1つ目が「市況の回復と統合効果を発揮することで統合初年度より営業黒字化を目指す」(ルネサス エレクトロニクス代表取締役社長の赤尾泰氏)というもの。2つ目が「必用な構造改革を統合の初期段階に集中して取り組み、2年目には当期黒字化を目指す」、そして3つ目が「中期的な営業利益率(売上高比)は2桁を目指す」というもの。
これらの方針の根幹となるべく同社が進めているのが社長直轄の全社横断プロジェクトである「100日プロジェクト」であり、同プロジェクトで、今年度の重点取り組みである「事業機会の拡大による製品競争力の強化」、中長期的な視点での半導体の海外売上比率60%超に向けた「海外事業拡大への布石」、コスト競争力の強化に向けた「即効性あるコスト低減」、そして「TOPダウンによる構造改革推進」の実現に向けた各種のプロジェクトを行っていくことで、合併によるシナジーの早期具現化と体質強化を目指すとしている。
100日プロジェクトは、その概要としては、「事業ポートフォリオの最適化や開発環境・設計プラットフォーム・プロセス統合、生産構造の再構築などを行うことで、リソースを捻出、それを注力・成長分野に再配置する」(赤尾氏)ということを掲げている。
なお、同社は旧ルネサス テクノロジ側の資産および負債の時価評価が5月11日時点で未確定なことに加え、この100日プロジェクトで中長期も含めた数値目標を決定するとしており、具体的な通期業績見通しなどは非公開となっている。ただし、「2011年3月期の半導体市場の成長率は11.2%と見ており、マイコン事業をコアコンピタンスにアナログ&パワー半導体との事業シナジーを追求することに加え、海外市場向けの売り上げ拡大を図っていくことで、今年度の半導体売上高は前年度14%増の1兆700億円、全体でも1兆1700億円の売り上げを見込む」(同)としている。