アドビ システムズは表参道にオープンしているギャラリー「station 5」にて、「Photoshop」の歴史を振り返る「Photoshop 20周年記念セミナー」を開催した。このセミナーでは、Photoshopの誕生から「Photoshop CS4」までの歴史が紹介された。前編中編に続きPhotoshopの歴史を紹介していこう。

デジカメの進化と共に生まれた「Photoshop CS」

バージョン表記を数字から「CS」に変えたことにより、「ブランディングに苦労した……」とアドビ システムズの栃谷氏が紹介した「Photoshop CS」。当時はアドビユーザーも「どうやらアドビから違う製品が出たらしい」と混乱していたと言う。Photoshop CSで追加された機能は、デジカメが急激に普及したことにより必要となったRawデータの読み込みや「レンズフィルタ」など。しかし、Photoshopで初めてRawが読み込めるようになったのは、CSではない。2003年春頃には「Photoshop 7.0」用のプラグインが別売で提供されていたのだ。なお、余談として栃谷氏は、「当時サポートしていたデジカメの機種は21種類程度だったが、最新版の『CS5』では270種類以上になっている」と語った。

「CS」シリーズになり、「眼」から「羽根」へとイメージが変わったPhotoshop

いまでこそ当たり前のRaw現像だが、PhotoshopではCSから標準装備された

デジカメ写真のレタッチが強化された「Photoshop CS2」

Photoshop CSのRawに続いてカメラマンに喜ばれたのが「レンズ補正フィルタ」だと言う。レンズ補正はカメラマンが困っていた樽型や糸巻き型のゆがみ補正や、色収差を簡単な操作で修正する機能。しかし、それ以上に好評だったのが「変形」だったようだ。普通のレンズで撮った写真に「あおり感」などを出せ、ユニークな絵作りが可能になった。その他にも、サンプル画像を必要とせずに被写体を消せる「スポット修復ブラシ」は、誰もが使って楽しめるツールだったそうだ。栃谷氏は「みんないろいろなモノを消して遊んでましたね」と当時の様子を語った。

レンズのゆがみを修正する「レンズ補正」フィルター

別ソフトとして「Adobe Bridge」が付属した

上位版の「Extended」も登場した「Photoshop CS3」

記念すべきPhotoshopのバージョン10となる「Photoshop CS3」は、ユーザーを困惑させた。理由は通常版とExtended版の2種類が発売されたから。Photoshop CS3の新機能は、Extended版の3D機能と、通常版でも使える「スマートフィルタ」、「レイヤーの自動整列」など。

当時のアドビはマクロメディアと合併し「Flash」もCSシリーズに統合。栃谷氏がこのころの想い出として語ったのは、ユーザーを対象にしたパブリックベータテストの実施だ。「Photoshopの開発はアドビ社内でもトップシークレットなのに、初めて外部にベータテストを行いました」とのこと。

Photoshopで3DCGデータが読み込める。「『Photoshop』はどこに向かってるんだ?」という問い合わせも多かったそうだ

複数の写真を自動的に合成してくれる「レイヤーの自動整列」。集合写真をキレイに仕上げてくれる

「Photoshop CS4」のさらなる進化

「Photoshop CS4」では、「Photoshop CS3 Extended」の3D機能がさらに強化された。鏡面反射する3DCGに、背景の画像を写り込ませることができるようになったのだ。通常版でも使える機能としては、画像内のオブジェクトを変形させずに画像の縦横比を変えられる「コンテンツに応じて拡大・縮小」。この機能は「Photoshop CS5」で大幅に強化され、「コンテンツに応じた塗り」へと進化することになる。評判がよかった機能は、「色調パレット」や「トーンカーブ」、「レベル補正」などを行なう際、いちいちウインドウを出さずにできることだと栃谷氏は語った。

縦横比を変えても物体は変形しない。とても強力なツールだ

自動車の車体に、背景の写真が写り込んでいる

このセミナーでは、Photoshop 1.0から現行版であるPhotoshop CS4まですべての製品が紹介された。このPhotoshopの歴史を踏まえつつ、まもなくリリースされる「Photoshop CS5」を待ちたい。

セミナー会場は「station 5」だが「CS5」の話は一切無し。「『CS5』はまた別の機会に……」と語る栃谷氏。また、会場には歴代Photoshopのパッケージが展示された。現在のパッケージの2倍以上のサイズだ