富士通は1月29日、2009年度決算および2010年度の業績見通しを発表した。同発表によれば、2009年度売上高は前年同期比0.3%減の4兆6,795億円、営業利益は前年同期比37.2%増の943億円、経常利益は前年同期比372.7%増の711億円となった。

富士通 2009年度決算概要

2009年3月期 前年同期比(%) 2008年3月期 前年同期比(%)
売上高 4兆6,795億円 △0.3 4兆6,929億円 △12.0
営業利益 943億円 37.2 687億円 △66.5
経常利益 711億円 372.7 150億円 △90.8
純利益 930億円 マイナス1,123億円

売上高は年初計画を下回ったが、営業利益は年初計画を上回った。その理由として、「国内や欧州を中心にIT投資は低迷したが、LSI事業の構造改革や欧州再編を実施しながら、全社的なコストダウンと経費削減に努めたこと」が挙げられた。

また、経常利益と営業外損益が大幅に改善されたことについては、前年度に業績悪化や構造改革の実施により損失を計上していた富士通テクノロジーズ・ソリューションズ(FTS)とFDKを連結子会社化したことによる持分法損益の改善などによるとしている。

セグメント別では、テクノロジーソリューション(ソリューション/SI、インフラ、システムプロダクト、ネットワークプロダクトなど)の売上高が3兆1,210億円(前年比1.4%増)で営業利益が1,524億円(前年比19.2%減)、ユピキタスプロダクトソリューション(PC、携帯電話、HDDなど)の売上高が9,187億円(前年比3.2%減)で営業利益が229億円(前年比294億円増)、デバイスソリューションの売上高が5,472億円(前年比6.9%減)で営業利益がマイナス87億円(前年比631億円増)となっている。

2009年度のPCと携帯電話は新機種が好調で出荷台数は前年よりも増加しているが、低価格化の影響を受け、ユピキタスプロダクトソリューションは減収となった。

富士通 執行役員社長 山本正己氏

執行役員社長を務める山本正己氏は、「前社長の野副氏を巡る問題ではご迷惑をおかけして申し訳ない。この問題に関する当社の見解は4月14日の記者説明会で示したとおり」と前置きしたうえで、2010年度の取り組みについて語った。

「2010年度は、売上高について前年比3%の4兆8,000億円を計画している。好転の要因として、リストラの効果、IT市場の回復、グローバルベースの採算管理の強化がある。グローバル企業として、営業利益率を現在2%のところ、5%に引き上げたい。また、海外売上比率も現在37%のところ、40%以上に引き上げることを目標としている」

同氏によると、2010年度のカギは「クラウド」と「グローバル」にある。同社は今月、クラウド・プラットフォームのグローバル展開を発表しており、2010年度はオーストラリア、シンガポール、米国、英国、ドイツへと展開していく予定だ。また、グローバルのキャリアと提携して、データセンターの展開も計画されているという。「クラウドはこれまでICTが十分利活用されていなかった医療、農業、教育といった分野における課題を解決する可能性を持っている」

また2010年度は大きな成長を果たすべく、1,000億円の投資を計画しているという。「1,000億円の投資は、"新ビジネスの創造"、"クラウドコンピューティング"、"スーパーコンピュータ関連"の3つを柱として行っていく」と同氏。

同社は今年度から、副社長5人と専務2人という新体制で臨んでいるが、同氏は新体制の一環として、CSO(最高戦略責任者)を設けたことを明らかにした。その理由については、「これまで同社の経営戦略が見えづらかったため、今後は同社の経営戦略を内外に示していきたいから」という説明がなされた。