米Amazon.comのクラウドサービス部門であるAmazon Web Services(AWS)は4月28日(現地時間)、同AWSサービスのアジア太平洋地域でのオペレーションを開始すると発表した。これまで、日本などの同地域でのAWS利用は米国または欧州にあるデータセンターを経由する必要があったが、今後はより距離的に近いシンガポールの拠点を利用可能になる。
今日、一般に知られる"クラウド"サービスの草分けとして2006年にサービスを開始したAWSだが、利用量に応じて課金が行われるというユーティリティ・コンピューティングの概念を導入し、特に中小サービス企業にとってコスト削減とスケーラビリティ強化の手段として注目を集めた。AWSは複数のデータセンターを世界に展開しているが、そのすべては米国と欧州の特定地域に集中しており、例えば日本からAWSを利用する場合、太平洋ケーブルをまたぐことで発生する遅延が問題になるなど、特にデータ配信やエンタープライズ用途などで利用のハードルとなっていた。こうした経緯を受け、同社では2009年11月にアジア太平洋地域への拠点拡大を発表しており、今回のアナウンスで正式にサービスが利用可能になった。
AWSはAmazon EC2のインスタンス実行サービスのほか、Amazon S3のオンラインストレージサービスなど、さまざまなサービスの複合体となっている。Amazon.comが公開した事例では、オーストラリアの家電デザインソフトウェア企業のAltiumが、AkamaiからS3+CloudFrontを組み合わせたAWSインフラへと切り替えた話が紹介されており、従来の4分の1のコストで1.5GBのファイルを何千もの顧客に配信するサービスを構築できたと報告している。