米Salesforce.comと米VMwareは4月27日(現地時間)、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催された合同イベントでエンタープライズ向けクラウドの新プラットフォーム「VMforce」を発表した。その特徴はJavaデベロッパー向けの開発フレームワークを利用して作成したアプリケーションをForce.comのインフラ上に簡単に展開できる点で、VMwareの仮想化技術、Force.comのDBやソーシャルサービスなどをアプリケーションから自由に呼び出せる。
VMforceは2社の技術の長所をうまく組み合わせた構成になっている。米VMwareプレジデント兼CEOのPaul Maritz氏は「企業システムを強固でスケーラブルなものにするために仮想化技術を推進してきたVMwareだが、企業は既存のアプリケーション資産を活かす必要性と同時に、複雑なシステム運用という問題に直面している。こうした問題の解の1つがクラウド技術であり、今回のVMforceだ」と新サービスの位置付けを説明する。
同社は2009年8月にオープンソースJava開発フレームワークのSpringSourceを買収している。このSpringSourceのほか、同社のvCloudやvSphereといった技術を組み合わせることで、Javaデベロッパーを違和感なくクラウド開発の世界へと誘導し、かつ強固なシステム管理を実現するのが狙いという。
一方、インフラ運用を担当する米Salesforce.comの会長兼CEOのMarc Benioff氏は、VMforceの基盤となるForce.com利用のメリットを説明する。同氏によれば、「Force.comのパフォーマンスは通常のクラウドインフラの5倍のパフォーマンスと2分の1の運用コストと評価されている」という。この強固なインフラを活用して、全世界に600万人以上ともいわれるJavaデベロッパーをクラウド開発の世界へ誘導し、かつ新世代のクラウドである「Cloud 2」での成功を助けると意欲を語る。
VMforceの動作は、実際のデモをご覧いただくとわかりやすいだろう。Salesforce.comでは「Hello Cloud」「SpringTravel」「ChatterTravel」という3段階のステップでアプリケーションの開発からデプロイメント、そしてデバッグのやり方についてYouTubeで発表会のデモ映像を公開している。
Javaアプリケーションの開発には、SpringSource Tool SuiteといったJVM上で動作する標準的なIDEが利用できる。ここでアプリケーションを作成した後、通常であればJBossなどのJavaを実行可能なサーバにアプリケーションを転送するのだが、デモによればSpringSource上からVMforceにログインすることで、クラウドをステージサーバに指定することができる。ここにプログラムをドラッグするだけで公開が完了する。あとはVMforceのWebページを開いて、アップロードしたプログラムを実行するだけだ。デバッガもVMforce上で動作しており、エラー情報などを確認できる。
Hello Cloudといったシンプルなアプリケーションだけでなく、SpringSourceの標準サンプルであるSpringTravelをそのままVMforceに転送して実行することも可能だ。またForce.com上のデータベースを参照するようプログラムを記述することで、同データベース内の顧客データなどを参照・更新することも可能。つまり、Force.com上で実装される他のアプリケーションやサービスと連携することもできる。
また、Salesforce.comが最近発表したばかりのエンタープライズ向けソーシャルコミュニケーションサービス「Chatter」を呼び出すこともでき、アプリケーション内にChatter APIを実装することで、VMforceにこの種のコミュニケーション機能を実現できる。加えて、Force.comのサービスインフラを活用することで、通常のWebだけでなく、iPhoneやiPadなど、デバイスに応じて最適化されたUIをアプリケーションで簡単に実装できる。
提供スケジュールはデベロッパー向けプレビューが2010年内の公開で、価格体系などについても追ってアナウンスされる見込みだ。