日本オラクルは4月21日、同社が提供するSaaS型CRMアプリケーションの最新バージョン「Oracle CRM On Demand R17」のリリースを発表、同日提供を開始した。日本オラクル 執行役員 CRM On Demand統括本部長 藤本寛氏は「CRM On Demandの専任組織を立ち上げてから2年半が経ったが、現在、既存のお客様の更新率は80%を超えており、SaaS型CRMの裾野が確実に広がってきたと実感している。新バージョンでは既存ユーザの使い勝手を向上させる機能追加が数多く行われている」と語り、クラウドの流行で市場が拡大に転じる状況下にあって「完成度と競争力の高い製品をリリースできた」としている。
Oracle CRM On Demandは、Oracleが2006年に買収で手にしたSiebel CRMの資産を発展させた製品。藤本氏は「買収から3年半、社内に専任部署を置いてから2年半、途中、リーマンショックなどのマイナス要因もあったが、倍々ペースでSaaS型CRMビジネスを伸ばすことができた」と振り返る。SaaS型CRMが伸びた要因として、藤本氏は
- SaaSの位置づけが"すぐに始めてすぐに止めることができるソリューション"から"できるだけ長期に使うソリューション"へと変わってきた
- 導入規模が、1ケタ、あるいは数十から数百数千を超えるものへと大きく増えてきている
の2点を指摘、クラウドコンピューティングの普及とともにSaaSそのものの評価が高くなったことが大きいとする。「現在はお客様のほうから"最初からSaaS/ASPでシステムを組んでほしい"という要望をいただく。これは1、2年前では考えられなかったこと。またグローバル化が進み、海外拠点はSaaSで、という事例も増えてきている」(藤本氏)
さらにSaaS型CRMが「単なるポイントソリューションから、既存のIT資産との連携、基幹システムとのインテグレーションが進みつつある」(藤本氏)とし、重要度が高まっている状況にあるという。
新バージョンとなるOracle CRM On Demand R17はこういった現状をふまえ、既存ユーザの使いやすさを改善する機能を中心に大幅な改善が図られている。ポイントは
- スマートクライアント … Adobe Flash/AIR、Ajaxを採用し、ユーザインタフェースの使いやすさ、操作性の向上を実現。顧客の要望を取り込み、「ヘッドアップディスプレイ」「ブランディングカスタマイズ」「レコードコピー」「リサイザブルUI」などの機能を追加、入力オペレーションの省力化を図っている
- ビジネスインテリジェンス … 分析スキーマを強化、売上予測管理や業種向けデータモデル分析などを強化し、より精度の高い予実管理を実現
- コラボレーション … 営業活動において協業するパートナーや代理店との情報共有を重視、案件情報やサービスリクエストだけでなく、代理店審査やランク付け、リードや商談など重要情報の共有、個別の仕切り価格設定や値引き設定などが可能に
の3つ。さらに、開発者向けに、データ連携やプロセス連携などを強化すべく、エンタープライズ基盤のオープン化を促進、バルクロードのデータ容量を無制限にしたり、カスタムオブジェクトによるシステム拡張を可能にしている。
新機能のひとつ「ヘッドアップディスプレイ」では、1クリックで顧客情報や案件情報など必要な情報にアクセスできる |
画面テーマなどもユーザが好みのものに設定できる。長く使ってもらうためには、UIの改善は欠かせない |
なお、今回のリリースには間に合わなかったが、同社によれば"近日中"に無償オプション機能としてモバイル活用を強化する「Sales on the GO」を追加する予定。これはスマートフォンやノートPCなどのモバイル環境においても"クローズドループマーケティング"を実現するソリューション。モバイル端末上に顧客情報や訪問計画、プレゼン資料をダウンロードできるだけでなく、オフライン時の営業内容を記録でき、オンライン接続時に同期を取ることができる。つまり「営業活動と営業報告を同時に行うことを可能にする」(日本オラクル CRM On Demand統括本部 CRM SC本部 シニアセールスコンサルタント 山瀬浩明氏)機能。ユーザインタフェースもFlashが使われているため、画面のリフレッシュなどでストレスを感じることなく、「蓄積されたデータを直感的に扱うことができる」(山瀬氏)という。
Oracle CRM On Demand R17の価格は1ユーザあたり月額7,989円から。対応ブラウザはInternet Explorer 6以上およびFirefox 2.0以上。