国際航業ホールディングスは4月8日、宮崎県都農(つの)町にある太陽光発電施設「宮崎ソーラーウェイ」に設けられた「都農第1発電所」(発電規模50kW)の竣工式を開催。鉄道総合技術研究所所有のリニアモーターカー宮崎実験線上(約250m)に設置された、総パネル枚数442枚、架台総数33基、そしてコア部分となる電気室などを公開した。

既報のとおり、セルの種類は3タイプあり、モジュール(パネル)の面積、パネルを組み合わせたアレイのかたちなどが微妙に異なるものを試験的に導入している。架台は幅3.5m/奥行き4mと共通。鉄道総研から無償貸与された実験線設備をなるべく傷をつけないようにと、リニア時代にコイルを固定していたボルト穴をそのまま用いている。

架台の柱のボルト穴はリニア時代の穴を流用している

太陽光によって生み出された直流電力は、パワーコンディショナーを介して交流電力となり、都農第1発電所北端の橋脚下部に設けられた電気室を介して九州電力へと送電され、需要家へと届く。

国際航業グループは、都農第1発電所での塩害などに対する耐環境性実証データや、周辺環境への影響などの各種検証を行ったうえで、第1発電所の北側約3.6kmに、さらに都農第2発電所を設ける計画で、本年度上期には着手する予定だ。

都農第1発電所の太陽電池アレイの列

都農第2発電所は、発電規模1MWのメガソーラー発電所で、年間発電量約120万kWh、一般世帯の年間消費電力量300軒分、二酸化炭素削減量は600tにおよぶという。完成すれば世界でも類を見ない細長の発電施設となり、一般電気事業者以外の企業による国内初のメガソーラー事業所と同社はPRする。

国際航業グループが太陽光発電事業に参入した背景には、これまでの航空測量事業の市場縮小がある。次世代の成長戦略として、長年培ってきた空間情報の技術とノウハウを活かし、さらに同グループを傘下におさめる日本アジアグループの金融サポートを得て、企業・自治体の新エネルギー事業の戦略的パートナーとなるべく、メガソーラー事業への参入を決めた。同グループが繰り返しアピールする「技術と金融の融合」だ。

都農第1発電所から延岡方向(北側)を見る。この"空き地"部分3.6kmに第2発電所が建つ予定

太陽光発電協会が唱える太陽光発電のメリット、「クリーンで枯渇しない」「設置場所を選ばない」「メンテナンスが簡単」という3点に加え、同グループは、ほかの再生可能エネルギーと比べて立地制約が少ないこと、開発期間が短いことなどをあげ、かつ投資家が早期に収益を見込め、ローリスク、地域貢献という社会的意義が持てる事業だとも伝えていた。

いっぽう、宮崎県も2009年に「みやざきソーラーフロンティア構想」を立ち上げ、その発表から約1年という短期間で、国際航業グループとパートナーシップを結び、都農第1発電所を稼動させた。

天気は快晴。電気室のなかの送電メーターは11時過ぎの時点で40kWを示していた。ピークの14時前後に50kWに達するという

宮崎県の2008年の日照時間は2,099時間、快晴日数は54日で、ともに全国3位。太陽光発電に適した地で、メガソーラー発電所の協働設置、関連企業の誘致や地場企業の参入を支援し、太陽光発電のフロントランナーを目指すという。

リニア実験という役目を山梨に譲り、無用の長物となっていた宮崎実験線が、メガソーラー事業のステージに様変わりした。都農町は「発電所が観光資源にもなってくれれば」と期待を込める。宮崎ソーラーウェイや同町の関係者は、「第2発電所の着工が始まる前に、宮崎県知事とともに走るマラソン大会などを催してもいいのではなどと考えている」ともらしていた。

穏やかな都農町の海岸沿いに建つ都農第1発電所

国際航業グループは竣工式の2日前の東京会見で、この宮崎ソーラーウェイ事業について「グリーンインフラ事業は儲けが出るビジネスだ」と切り出した。「グリーンインフラ事業」とは、同グループのこれまでの社会インフラ整備の経験や実績に加え、宮崎県との大規模太陽光発電所の開発ノウハウおよび日本アジアグループの金融ノウハウ、そしてこれまで培ってきた全国自治体との信頼関係などを総合し、再生可能エネルギー設備と"その周辺ビジネス"を取り込んだ総合的インフラ事業をさし、同グループはそのリーディングカンパニーを目指すという。

なぜ周辺ビジネスを取り込むのか。そこには太陽光発電先進国ドイツなどと日本との"1kWあたりの電力の価格差"がそうさせているという説もある。太陽光発電設備でつくった電力を「固定買取制度」で高く買い上げることで、再生可能エネルギーによる発電量の占める割合を増やしていくという欧州に対し、日本は、同様の設備でつくった電力のうち、自家利用した分を除いた残りの量を通常の電気料金の2倍の値段で買い取る「余剰電力買取制度」があるが、この制度は今のところ都農第1発電所は対象外で、売電で得たお金とグリーンエネルギー認証によるグリーン電力料金によって収益をあげていくことになる。このあたりに欧州との差の開きがあるというのだ。

都農第1発電所竣工式典で、左から前川統一郎宮崎ソーラーウェイ代表、呉文繍国際航業ホールディングス代表取締役社長、東国原英夫宮崎県知事、河野正和津野町長

同グループは「太陽光発電の儲けは、最初は薄利だとしても、自治体などから周辺の仕事をもらえる機会がある。インフラ整備などにかかわることなどでさらに収益は増えていくだろう」と語る。太陽光発電のインフラ整備を計画・開発・運営し、その周辺ビジネスまでも取り込む「グリーン・インフラ事業」を本格化させ、すべての自治体に"宮崎モデル"を提案していくという。