日本テクトロニクスのマーケティング部部長の大石弘幸氏

Tektronixの日本法人である日本テクトロニクスは4月19日、英Mesuroと提携し、Mesuroが開発したRFソリューションを日本で展開していくことで合意したと発表した。

同提携について、日本テクトロニクスのマーケティング部部長の大石弘幸氏は、「そもそもMesuroの技術は英国Cardiff Iniversity(カーディフ大学)で研究されたRFパワーデバイスの計測手法"アクティブ・ロードプル測定システム"を活用したもの。これと我々のオシロスコープなどを組み合わせることでより広い領域での測定が可能となり、無線装置に要求される小型、軽量化、低消費電力化、大容量データ処理などに対応可能な高効率パワーアンプの開発が可能になる」とその意義を述べる。

ネットウェルの提供するMesuroのソリューションを通してTektronixの測定器が供給される仕組みとなる

MesuroのCTOであるJohannes Benedikt氏

同技術についてMesuroのCTOであるJohannes Benedikt氏は、「我々の測定システムである"MBシリーズ"は、デバイスおよびパワーアンプ設計メーカーの開発サイクル短縮を可能とするもの」とその概要を説明する。

MBシリーズは、任意波形ジェネレータを用いて広帯域におけるインピーダンスを制御できるほか、パッシブチューナが不要なため、煩雑な作業や測定エラーの低減が可能となる。また、それぞれのシステムインピーダンスに対応した最適な負荷の設定が可能で低インピーダンスのシステムにも対応するという。

英Cardiff Universityで長年開発してきたOpen Loop Active Load Pull技術を事業化

「従来のパワーアンプの測定では、RF部品とシステム開発プロセスで活用されているが、システムとして測定することはかなり難しいという問題があった。我々は、そうした課題に対応するためにWaveform Engineeringに基づき、デバイスにおける電流と電圧の実際の波形を同時に測定することをベースとした、より一般化したロードプルへのアプローチの波形形成技術を開発した」(同)とし、同社の提供する「Open Loop Active Load Pull」が次世代の測定法として活用されるようになるであろうとの期待を覗かせる。

従来のパワーアンプ測定方法は1つの方法で全領域のカバーが困難であったが、同社の技術を活用することでそれが可能となるという

同測定法の特長は、無条件安定性や測定アーチファクトがないことによる高反射負荷に対する高測定精度を実現しているほか、アンプだけでなくデバイスとしてのウェハ上の測定に求められる電気的ソリューション課題にも対応することが可能となっている点にある。

また、EDAツールとの融合が可能であり、測定データの電流値および電圧値をそのまま適用することが可能。今後、適用できるEDAツールの種類を増やしていくことが検討されているという。

ネットウェル代表取締役社長の榎本格氏

提供されるソリューションとしての構成は、Mesuroの20W対応測定システム「MB20」もしくは150W対応測定システム「MB150」にTektronixのサンプリング・オシロスコープ「DSA8200型」や任意波形ジェネレータ「AWG7000 シリーズ」を組み合わせたもの(標準構成例ではこれにAWRの最適化回路環境ソフト「MWO-225」も含まれる)となる。価格は標準構成例で7,500万円(税別)からで、国内での販売はネットウェルがサポートまで含めて担当する。

Mesuroの技術を中心にTektronixとAWRの技術を組み合わせたターンキーとしてネットウェルが提供を行う

ターンキーソリューションとしての提供となり、価格が7,500万円と高価なことから、ネットウェル代表取締役社長の榎本格氏は、「当社は単に海外製品を輸入して販売するという代理店ではなく、より付加価値を高める取り組みを進めている。今回も日本テクトロニクスやAWRと組み合わせたソリューションとして提供することで高額なソリューションとなってしまっていることを理解しており、2010年秋頃からのレンタル提供や当社がデバイスを預かりMesuro側でデータを取るといった安価な測定サービスの提供なども検討している」とし、より安価なソリューションの活用法も用意することで、幅広い分野での活用を狙っていくとしている。

ターンキーソリューションの対象分野とMBシリーズを活用したシステム構築例