セールスフォース・ドットコムは4月15日、東京都内でプライベートカンファレンス「Cloudforce Tour 2 Tokyo」を開催した。同カンファレンスでは、昨秋発表されたリアルタイム・エンタープライズ・コラボレーション・アプリケーション/プラットフォーム「Salesforce Chatter」の紹介を中心に、同社の製品の最新動向について説明が行われた。
基調講演を務めたのは、米国セールスフォース・ドットコムPresident, Worldwide Sales and Chief Sales Officerのフランク・ヴァン・ヴィーネンダール氏だ。
同氏は現在、「クラウドはCloud1からCloud2にシフトしつつある」として、クラウドが新たな段階に進んでいると述べた。
同氏はCloud1とCloud2について次のように説明した。「Cloud1は"低コストで簡単"が目的であり、Amazon.comやeBayが中心となって推進していた。また、デスクトップとモバイルデバイスの双方から利用することができ、企業向けアプリケーションとして広く普及した。一方、Cloud2は利用するためのデバイスがモバイルにシフトしており、コラボレーションが主目的となっている。利用されているコンテンツはSNSやソーシャルメディアなどリッチなものとなっている」
こうしたCloud2時代では、リアルタイムコミュニケーションを取れることが重要であるとして、同社が発表したのがSalesforce Chatterだ。同製品は、米国で昨秋に開催された同社の年次カンファレンス「Dreamforce '09」で発表された。
「マイクロソフトのSharepointなど、企業向けのコラボレーションツールはこれまでもあったが、どこに情報があるのかわからず、必要な情報に"アクセスできない""きちんと管理できない"といった課題があった。その理由に、情報をプッシュする機能が十分活用できていないことがある。そこでわれわれは、mixiやFacebookといった、コンシューマー向けのリアルタイムでコラボレーションできるツールに目を向けた。FeedやProfileといった機能を有するFacebookはアイディアの源泉だ。Facebookのような企業向けコラボレーションツールとして作り出したのがChatterだ」
同製品のインタフェースや機能は、コミュニケーションツール「Twitter」によく似ており、ユーザーごとにプロフィールページが設けられており、ユーザーはそこで「つぶやく」ことができる。ただ、企業向けとうたっているように、ChatterはTwitterと異なり、オラクルのアプリケーションや価格表といった業務で用いるドキュメントやアプリケーションをリンクさせることが可能だ。
「Chatterによってリアルタイムでコラボレーションすることで、"生産性の向上""意思決定のサポート""商談成約の増加"が実現される」と同氏。
カンファレンスではChatterのデモが行われ、ユーザーが担当中の商談について相談するとフォローしているユーザーからアドバイスが行われたり、関連したドキュメントを入手できたり、担当している企業について研究しているグループに参加できたりする様子が披露された。
Chatterのプライベートベータプログラムは、米国では2月から一部企業に提供が開始されており500社が利用しているが、国内では4月から15社に提供が開始された。
その15社のうちの1社であるネクスウェイ マーケティングソリューション推進部の上田代里子氏が、同社におけるChatterの利用状況を紹介した。同社は約8,000社の顧客企業に対し、ドキュメントデリバリーやマーケティング支援といったサービスを提供している。
上田氏によると、同社がリクルートから分社した企業であることもあり、ナレッジ共有が盛んだという。こうしたことから、営業マンのナレッジ共有を強化するため、Chatterが導入された。
「Chatterを導入してから10日間しかたっていないが、すでに導入効果が出ている」と同氏。これまで話したこともなかった営業マン同士がChatterでナレッジやノウハウを共有したり、営業マンが他部署の案件にChatter上でアドバイスを行ったりと、部署を越えたコラボレーションが始まっているとのことだ。
同社は今後、Chatterが社内で発生する顧客に関連するイベントを集約するとともに、それらのリアルタイム共有を図って、企業力を向上するコミュニケーションプラットフォームとなるかどうかを検証したいという。
昨秋Dreamforce '09でChatterの発表を聞いた際、正直なところ、Facebookが広く普及している米国ならともかく、ソーシャルメディアの企業利用が浸透していない日本でChatterが受け入れられるかどうか少々疑問を感じた。
しかしここ数ヵ月、IT系メディアに限らず、新聞・テレビ・週刊誌など、一般メディアがこぞってTwitterを取り上げ、また、Twitterをマーケティングに活用する企業も増えてきている。こうした状況を考えると、基本的にバージョンアップはグローバルで一斉に行う同社であるが、日本でのChatterのリリースを米国より遅らせたのは正解であったろう。
ただ、ネクスウェイはもともと情報の取り扱いが上手なリクルートのDNAを持っている企業であるため、他の企業に比べて新たなコミュニケーションツールに対する敷居も低いと考えられ、同社のように一般企業でChatterがすんなり受け入れられるかは未知数だと思う。
もっとも、同社の国内の顧客企業は,2000社を超える。これら企業におけるChatterの使われ方次第で、今後の企業コラボレーションは変わっていくかもしれない。