Analog Devices(ADI)は4月8日、同社の32ビット浮動小数点DSP「SHARC」の第4世代品として、「ADSP-2148x」「ADSP-2147x」ファミリを発表した。

SHARCは、主に「民生機器」「産業用」「医療用」「自動車」の4つの分野に向けたDSPで、今回の2ファミリは前世代品に比べ高性能化および低消費電力化を進めたもので、民生機器や家庭用医療機器などでも活用されることを意識したものとなっている。

第4世代SHARCとなる「ADSP-2148x」「ADSP-2147x」ファミリのパッケージ外観

アナログ・デバイセズのDSPテクノロジーグループ シニアマネージャーの藤川博之氏

特にパッケージに関しては「そうしたターゲットマーケットからの要求が根強い」(アナログ・デバイセズのDSPテクノロジーグループ シニアマネージャーの藤川博之氏)ということからQFPを採用。2148xが14mm×14mmの100ピンLQFPおよび24mm×24mmの176ピンLQFP、2147xが100ピンLQFPおよび12mm×12mmの196ボールCSP BGAとなっている。

2148xは最大400MHz駆動のSIMDコアを採用したDSPで、オプションとして300MHzもしくは350MHzも選択することが可能だ。また、5MビットのオンチップRAM(オプションとして3Mビットも用意)を搭載したことで、メモリ依存のアプリケーションについても高い性能を実現することが可能となっているほか、1部の製品にはオーディオデコーダ内蔵の4MビットROMもオプションとして用意されている。400MHz駆動を実現しながらもQFPパッケージでの提供を選択したことについて藤川氏は、「ノイズなどの影響を抑える工夫を施すとともに、最終セット製品として考えた場合の適正なデバイス価格を実現するための工夫などを施すことで実現した」ことを強調する。

ADSP-2148xのブロック図と機能概要

さらに、メモリの利用効率を向上させることが可能な「バリアブル・インストラクション・セット・アーキテクチャ(VISA:可変命令サイズ機能)」をサポート。これにより、従来の48ビット命令から、冗長および未使用ビットを解析、除去することで16ビットもしくは32ビットの命令コードに圧縮することができ、コードサイズを平均20~30%低減することができるようになった。

VISAのサポートによりメモリ空間の有効活用が可能に

加えてフィルタ用ハードウェアアクセラレータとしてFIR、IIR、FFTを内蔵したことでコアを介在させずにバックグランドでのタスク実行が可能となった。処理性能としても「例えばFIRではアクセラレータのみの処理で400MHzコアによる処理と同程度の性能を達成している」(同)としている。

FIR、IIR、FFTハードウェアアクセラレータを搭載したことで、コアに負荷をかけずにそれらの高速処理が可能となった

このほか、ピン配置をプログラムすることが可能なシグナル・ルーティング・ユニット(SRU)を搭載。これにより、各種のペリフェラルに対応するピンを自由に配置することが可能となり、カスタマの用途に応じた自由度の高い開発と、ピン数の削減の両立が可能となった。

SRUの概要。それぞれDSP内のDAIとDPIピンに自由に機能を割り振ることが可能となっている

一方の2147xは低消費電力での活用を意識したファミリで、コアの動作周波数も266MHzもしくは200MHz(オプション)となっている。「2148xと同系のプロセスノードながらより低消費電力を意識したテクノロジーなどを取り入れることで、クロックの低減以上の低消費電力化を実現した」(同)としており、消費電力は363mW(typ)を実現している(266MHz、コア電圧1.2V、70%アクティブ実行のSIMD FFT、3個のSPORT@33MHz、シングルSPI、133MHzで60%の書き込みと30%の読み出しを切り替える外部メモリアクセス)という。

ADSP-2147xのブロック図と機能概要

この低消費電力性について藤川氏は、2つの狙いがあると説明する。1つ目は携帯電話などの超小型まではいかないものの持ち運びが可能な程度のサイズの機器での利用拡大。もう1つはこれまで固定小数点のデバイスを活用していた機器に対して浮動小数点への移行を促す、というものだ。

内蔵メモリは2148xと同様5M/3MビットのRAMおよび4MビットのROMが利用可能なほか、VISAモードの活用によるコードサイズの低減も可能となっている。

また、フィルタ用ハードウェアアクセラレータも同様にFIR、IIR、FFTを搭載しているほか、SRUも搭載。加えて、LQFP100ピンの製品ではサーマルダイオードによる実周囲温度をモニタリングしながらコントロールすることが可能となっている。

ADSP-2148x/2147xファミリそれぞれの機能比較

なお、いずれの製品もすでにサンプル出荷を開始しており、価格は1万個受注時で2148xが8.20ドルから、2147xが7.85ドルからとなっている。また開発向けとして一通りの評価が可能な「EZ-KIT Lite評価キット」および評価ボード単体の「EZ-Board評価ボード」も供給が開始されている。量産は176ピンLQFPの2148xが2010年11月より、196ボールBGAの2147xが同12月より、100ピンLQFPの2148xが2011年1月より、100ピンLQFPの2147xが2011年2月からをそれぞれ予定している。

評価キットや評価ボードの提供も開始している