シャープは4月2日、専用メガネを用いずに裸眼で立体表示を可能とする携帯機器向け2D/3D表示切り替え可能タッチパネル付3D液晶ディスプレイ(LCD)を開発したことを発表した。
携帯機器向けに裸眼で3Dの視認が可能なディスプレイを提供することについて、同社常務執行役員で液晶事業統括兼液晶事業本部長の長谷川祥典氏は、「テレビの世界が白黒からカラーへ変わり、そして3D化が進んできた。携帯電話も通話だけだったのが通信が可能となり、今ではテレビを視聴できるようになった。普通のテレビが3D化すれば必然的にモバイルでも同様のことが起きるはずで、その時期が目前まできているものと考えている」と説明する。
また同社では2002年11月に、3D対応の携帯電話を発表、その後PCなどへの搭載も行ってきたが、市場での定着はしなかった経緯があるが、このことについて長谷川氏は「大きくは3つのポイントがあると考えている。1つ目は輝度や精細度といった表示品位が低かったこと。2つ目にモジュールの厚みによる制約。3つ目に3Dの表示が一方向だった」とし、これにコンテンツの準備が不十分であったことも加え、技術的にも、市場的にも普及の妨げがあったとの見方を示した。
こうした経験を踏まえ、今回、同社では、2D表示時の表示品位を落とさない方法として高性能結晶性Siを用いた「CGシリコン技術」のプロセス微細化および視差バリア方式の最適化を実行。これにより輝度は従来品比で約2倍となる500cd/m2を達成。解像度も2D表示で従来の128~166ppiから240~330ppiへ、3D表示も同64~83ppiから120~165ppiへと向上させることに成功している。
また、視差バリアの貼り合わせ精度を向上させたことによるクロストークの低減を実現。二重写りの低減が可能となり、よりくっきりとした立体感を演出することを実現した。
さらに、従来からの問題であったモジュールの厚みを解決する方法として、タッチパネル+3D-LCDの場合、バックライトの上に「3D-LCDスイッチパネル」「LCDパネル」「タッチパネル」の3枚のパネルを重ねていた方式に対し、3D-LCDスイッチパネルとタッチパネルを一体化させる「タッチパネル一体型3D-LCDスイッチパネル」を開発。バックライトの上にLCDパネル、タッチパネル一体型3D-LCDスイッチパネルと配置することで、従来の2Dタッチパネル搭載型LCDと同等の厚みに抑えることを実現した。
2D/3Dの切り替えを行うスイッチパネルとタッチパネルを一体化させ、タッチパネルの厚みだけとすることで、現状のアプリケーション程度の厚みで3D化が可能となる(3Dのスイートスポットに関してはスイッチパネルの厚みを変えることにより変化させることが可能。今回デモ展示したものについては30cm程度となっている) |
従来品 | 開発品 | 従来との違い | |
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画面サイズ | 2.4型 | 3.4/3.8型 | - |
画素数 | QVGA(240×320画素) | FWVGA(480×854画素) WVGA(480×800画素) |
縦横ともに約2倍 |
輝度(2D時) | 250cd/m2 | 500cd/m2 | 約2倍 |
コントラスト比 | 100:1 | 1000:1 | 約10倍 |
タッチパネル機能 | なし | あり(なしも可) | - |
従来品との性能比較 |
加えて視差バリア方式を採用したことで、縦型、横型双方で3D表示を実現。これにより、さまざまな用途に対応できるようになったことから、「今回のパネルの開発により"3D-Ready"という言葉をモバイル機器にも適用できる状態となった。シャープとして、すべてのモバイル機器を3D対応とするべく取り組みを行っていきたい」(同)との意気込みを見せており、3~5型程度のラインアップを揃えていくほか、10型以上のパネル開発も進め、テレビなどへの適用も目指していく方針とする。
量産は2010年度上半期中にタッチパネル非搭載型より開始することを計画しており、順次ラインアップを増やしていくとしている。