キタミ式イラストIT塾 「ITパスポート試験」 平成22年度』は、ITパスポート試験の受験を考えている方に向けたIT技術解説書。かわいいイラストをふんだんに使っている点が最大の特徴だ。

行き届いた図解が豊富に用意されており、まさにITパスポート試験を受けるような"IT業界入門者"に最適の1冊となっている。

ITパスポート試験とは

「ITパスポート試験」という試験の名称を初めて聞いた読者も多いのではないだろうか。ということで、まずはこの試験についての簡単な紹介をしておこう。

ITパスポート試験は2009年(平成21年)の春期試験から実施された新しい試験で、初級システムアドミニストレータ試験の後継試験という位置付けである。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施し、経済産業大臣が認定している国家試験だ。なお、初級システムアドミニストレータ試験は、2009年の春期で終了している。

試験範囲はストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)の3分野に分かれており、それぞれ35問、25問、40問の配分で全て四肢択一の合計100問が出題される。

各分野別の出題範囲については、ITパスポート試験紹介サイトを参照してほしい。

イラストが実に効果的!

本書は、前述の試験範囲3分野について、さらに詳細な項目ごとに章立てされた構成となっている。

背表紙に掲載されている目次

また、各章の中で、重要と思われる事項が項目立てて解説されている。各項目は、基本的に「技術解説」+「イラスト」+「過去の出題事例」という構成になっている。

特徴的なのは、先にも触れたとおり、可愛らしいイラストによる解説が行われている点だ。これからITに携わる人々に取って、彼らの理解を妨げる要因となる最たるものが、用語の難解さではないかと思う。本書では、そのような難解な用語にイラストを付け加えることで読者の理解を手助けしている。

豊富な図解でわかりやすい解説

では、本書の内容を出題分野と照らし合わせながら詳しく見ていこう。

Chapter0からChapter9までは、テクノロジ系の出題範囲をカバーした内容になっている。

この分野では、コンピュータの動作原理や技術要素といったITの基礎に関わる事柄が出題されるのだが、その解説には本書の特徴である「わかりやすいイラスト」が最大限に活かされている。

特にハードウェアの解説に関してはコンピュータが実際にどのように動作しているのかをビジュアルで確認できるため、文章では伝わりにくい概念も理解し易い内容となっている。

Chapter10からChapter12がマネジメント系の出題範囲に対応している。

この分野では、システムの開発、システム開発の管理、システム・サービスの運用といったあたりが出題範囲となる。ブログラミングの技術要素やアルゴリズム(計算手法)といった内容について、ここでもやはりイラストが活きてくる。

そもそもプログラム言語というものは文字と記号と数字を使ってコンピュータに指示を与えるために考案されたものであるため、処理内容を視覚的に考えるということはとても重要である。本書でも紹介されているフローチャートやER図、DFD図といったものは実際のシステム開発の現場でも頻繁に使われているものなので、しっかりと押さえておきたいところだ。

アルゴリズムについては、検索とソート(整列)の代表的な例が、それぞれ「二分探索法」と「バブルソート」の解説として解説されている。興味を持った読者は、検索、ソートの他のアルゴリズムについて調べてみるのもよいだろう。

Chapter13からChapter15はストラテジ系の出題範囲に関する内容だ。

経営に関連する用語がカタカナやアルファベットで表現されていて理解できずに戸惑った経験はないだろうか。ITと経営は一見あまり関連がないように思われるかもしれないが、ITを経営に活用することは一般的になってきていて、ただやみくもにシステムを導入するだけでは適切な効果を望めないことが多い。そんな中で、経営についての分析を行う手法や適切なIT導入を行うにあたって必要な関連法規や用語などを解説している。

過去問題も大きな特徴

さて、これまでは本書の内容について大まかに説明してきたが、本書のもう一つの特徴である、過去の出題事例についても触れておきたいと思う。

本書の全ての章で、項目毎に過去の出題事例が数問掲載されている。本書の解説を理解していても出題の形式によっては難しく感じてしまうような設問もあるため、実際にどのように出題されるのかを事前に知っておくということは、試験に合格するためには重要なことだと思う。

また、前述のITパスポート試験紹介サイトには過去の出題内容の直近の2回分が解答例とあわせて公開されているので本書を読み終えた読者は挑戦してみてほしい(2010年3月20日現在で、平成21年度の春、秋の2回分が掲載されている)。

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ITパスポート試験の資格取得については、企業や学校などでサポートしてくれる事例も増えているようだ。一部の事例は、紹介サイトに掲載されているが、企業では資格取得に対して報奨金や受験料などの会社負担を実施しているところもあるようだ。これからIT業界を目指す人にとっては、欠かすことができない基礎知識なので、どんどんチャレンジしてもらいたい。

次回の試験は平成22年4月18日に実施される。

受験を予定していてまだ試験対策を始めていない人にとっては、イラスト付きの解説が充実している本書で十分な試験対策になると思うので、ぜひ読んでみてほしい。