マイクロソフトは3月24日、東京都内で「クラウドコンピューティングの取り組みに関する記者会見」を開催。同社がクラウドコンピューティング(以下、クラウド)についてどのように考え、どのような取り組みを行っているのかといったことについて現状の説明を行った。

マイクロソフト インターナショナル プレジデント ジャンフィリップ・クルトワ氏

同記者会見で登壇した同社米国本社のインターナショナル プレジデント ジャンフィリップ・クルトワ氏は、電子メールサービスやインスタントメッセンジャーなど、10年以上も前から同社がサービスを提供していることに触れ、「マイクロソフトは100%、クラウドにコミットしている企業である」点を強調。同社が考える「クラウドの5つの特徴」として、以下のような考えや取り組みについて紹介した。

1.「クラウドは、ビジネス機会だけでなく、社会的な責任も生み出す」

これは、クラウドによる新たなビジネスやビジネスモデルの創出に伴う機密情報の保護や責任、ユーザー自身がコントロール可能な技術の提供といった要素を示すもの。クルトワ氏は具体例として、クラウドのインフラを活用することで、コンテンツクリエイターが容易に世界を相手に仕事ができるようになるというメリット一例を紹介。また、ユーザーのセキュリティに関しては、(コンシューマ、ビジネスを問わず)同社がこれまでに培った実績を強調した。

2.「クラウドは、自ら学習するとともに、人々の学習、判断、行動をサポート」

人々のネット環境への依存度の高まりを背景に、検索エンジンの重要性が一層高まっている状況だが、クルトワ氏は「例えばデジタルカメラを買おうと思っても、検索エンジンはユーザーがコスト面でのメリットを求めているのか、画質を求めているのか、軽さを求めているのかといったことを自身で判断することができない」とし、現在の検索エンジンの問題点を指摘。同社で多数のエンジニアが開発に従事する自社の検索エンジン「Bing」が日々クラウド上で進化していることをアピールした。

3.「クラウドは、プライベートと仕事上での人々の相互交流を充実させる」

クルトワ氏は、同社のほとんどの製品が人を"つなぐ"ためのコミュニケーションに焦点を当てて提供されてきたことを訴えた。この点に関しては、すでにWindows LiveやXbox Liveといったサービスとして具現化されていることに加え、Webとの連携機能が強化された次期Office「Microsoft Office 2010」も、この"つなぐ"というコンセプトに基づいて今年6月に日米同時にリリースされる予定だ(法人向けは5月12日提供開始予定)。

4.「クラウドは、より機能の高いデバイスを求める」

同氏は、インターネットへの接続デバイスが増えている現状を踏まえながら、ヒューマンインタフェースの技術開発に注力していることに言及。声やジェスチャーによる操作を可能にするXbox向けの技術「Project Natal(ナタール)」に触れ、今後はこのような技術がPCやWindows Phoneなどのハードウェアのみならず、クラウドの進化にも寄与するという考えを示した。

5.「クラウドがサーバーの高度化を促し、サーバーの高度化がクラウドの強化を促す」

当然ながらサーバの存在なくしてクラウドを語ることはできないわけだが、クルトワ氏は同社のクラウドプラットフォームであるWindows Azureがすでにスタートアップ企業などで活用されていることを簡単に触れ、大企業からも「必要な機能を必要に応じてオン/オフできる柔軟性がCFO(Chief Financial Officer)にも評価されている」と語った。また同氏は、OfficeをはじめWindows ServerやSQL Serverといった同社が持つ既存製品が、Windows Azure、SQL Azureといったクラウド環境との親和性が高く、移行・連携が容易であるという点にも言及。同社の約4万名のエンジニアのうち7割がクラウド関連の活動に携わっている事実を踏まえ、同社の開発業務がクラウドを中心にして展開されていることを明かした。

西脇氏が示したデスクトップとクラウドの連携・移行に関する他社との比較表

同記者会見では、同社テクニカルソリューションエバンジェリストの西脇資哲氏がExcelとWindows Liveのオンラインストレージサービス「Windows Live SkyDrive」を使ったデモを披露。Google Docsを使った場合とのデータ連携の比較などが行われた。西脇氏は「SkyDriveならドラッグ&ドロップによる操作もサポートされるほか、データの再現性も同じ」とし、これらの要素の実現性について他社のサービスに関する導入や運用面における課題の存在を示した。

SkyDriveでExcelのデータを再現したところ

同じデータをGoogle Docsで再現したところ

なお同社は同日より、同社のクラウド関連の情報を集約した専用サイトをオープンさせた。

マイクロソフトが3月24日に公開したクラウド専用サイト