生命保険の疑問に答えるTwitterCAFE
ライフネット生命保険とマイコミジャーナルの共同セミナー『マイコミジャーナル TwitterCAFE ~還暦ベンチャー社長が挑む保険業界のタブー~』が、3月6日開催された。戦後初の独立系生命保険会社を作った出口治明社長が、ライフネット生命保険という会社やその商品について、またそこに込めた思いについて、Twitter経由で寄せられた質問に答える形で濃く深く語った。
前半は、ライフネット生命に寄せられた質問に答えながら、プレゼンテーションという形で会社や商品について説明を行った。会社設立のコンセプトから保険選びのポイント、ライフネット生命の「マニフェスト」、今後の展開などが語られた。下記はそこで使われたプレゼン資料だ。
これらの内容は出口社長の著書でも詳しく述べられている。また、一部は以前のインタビューでも触れられているので、興味のある方はぜひご参考頂きたい。
ライフネット生命・出口社長インタビュー
■ライフネット生命、出口社長が語り尽くす生命保険のカラクリと原価開示のスゴさ
■30代以上は知っておきたい"生命保険の使い方" - ライフネット生命・出口氏
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後半は、来場者やTwitter経由で寄せられた質問に対し出口社長が次々に答えていった。今回、QAセッションに多くの時間が割かれる形となった。これは、より多くの質問に答えたいという社長の意向によるものだ。以下、質疑応答のやりとりをご紹介する。
保険のことから子育て・人生まで、出口社長が答えます!
──10年前の保険と比較して、今の保険の利点・欠点、また注意すべき点はありますか
出口 日本人の死亡率が大きく変わらないので、基本的には変わりません。ただ、2006年の保険業法改正で保険商品の手数料が自由化されました。また、金利も変わる可能性があります。保険料は一般に、同じ保障内容であれば年を重ねるにつれ高くなりますが、20~30代では解約したほうが有利な場合がほとんど。40代以上では加入時の年齢によります。
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──ガン保険の特約は入ったほうがよいのでしょうか
出口 ガン保険が売れているのは、ガンが怖いという恐怖心と、保険料が割安に見えること、そして手数料が高いので販売店が売りたがるという理由からです。実は普通の医療保険に比べてガン保険は保険料に占める手数料の割合が非常に高くなっています。人は何の病気で入院することになるかわかりませんから、ガンも含めてカバーする医療保険に入れば、必ずしもガン保険に入る必要はないと思いますが、祖父母やご両親など、家系にガンの方がいらっしゃるなら、入る意義もあるのではないでしょうか。
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──結婚するまでは保険はいらない?
出口 死亡保険についてはそれも成り立ちます。しかし、若い時のほうが保険料が安いので、就職したら最低金額として500万円くらいに入っておいてもよいのではないでしょうか。結婚したら増額する、子供ができたら増額する、という買い方もあると思います。これはその人の人生観だと思います。
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──現在の保険を解約したらもったいない気がします
出口 何を"もったいない"と考えるかによります。例えば、現在の契約が3,000万円の保障で月1万5,000円の保険料が、ライフネットで見直したら約半額の8,000円になったとします。これをビジネスで考えた場合は当然、1万5,000円を解約し、8,000円の保険に入って、7,000円キャッシュフローを浮かせよう、という考えになります。20代30代であれば、同じ保障内容の場合はライフネットのほうが安くなるので、古い契約を解約したほうが得だし、そこで浮いたお金でパートナーと毎月美味しいものでも食べに行くのもよいでしょう。これまで払った分については、済んだことは戻らないと考え、来月からの保険料をいくらにするか考えることがよいと思います。
──ライフネット生命が海外進出するとしたら、その戦略は?
出口 IBMの保険サーベイが世界の保険契約者1万人に対して調査を行ったところ、お客様が望んでいるのは "シンプルでわかりやすい商品を、透明性高く、正直に売ること" であったそうです。これをブログに書いた岩瀬(副社長)も「ライフネットの経営理念そのものだ」と言っていました。保険は英国で生まれたものですが、日本でもこのように売れています。国によって条件が異なることはありますが、僕はライフネットの経営理念は世界に通用すると考えています。
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──生保業界の競争において、勝算はありますか
出口 ライフネットと同じような会社を作ることはとても簡単ですから、勝算はありません。しかし、大切なのはライフネットの従業員が毎日一生懸命働いている、創意工夫するという点です。私を含め、従業員全員のモチベーションにかかっていると思います。
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──生命保険に求めるものは安心感です。インターネットで販売するライフネットの場合、その安心感はどうカバーしますか
出口 極論すれば、カバーできません。人間は見たものを信じますから、インターネットのビジネスはリアル(な店舗)には勝てないと思います。だからそのことを忘れないために、ライフネットのシンボルは人間の顔なんです。インターネットだけでリアルのセールスをカバーすることはできませんが、少しでもカバーしようと思い、我々は全国を歩いて講演会などを行っています。
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──30歳独身ですが、親の介護が必要になった場合のことが心配です
出口 我々が事業を始めたときは、苦しんでいる20~30代のための商品を中心にスタートしましたが、(契約者の高齢化にともなう介護保険などについて)将来的に生保業界全体で考えていかなくてはならない、もっともチャレンジが必要な領域だと認識しています。
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──大手生保は、今後どうなっていくとお考えですか
出口 しばらくは人口が減っていくわけですから、日本の大手は株式会社化して海外に出て行くなど様々なことをして収益を上げていくほかないと思います。また、人口が減れば働き手(保険外交員)もいなくなります。さらに企業やマンションのセキュリティ強化によって、保険外交員が商品を売りに行く"場"がなくなっています。こうした社会構造の変化で、保険外交員が売るというシステムは落ちていくでしょう。だから(販売チャネルとして)銀行・ネットなどからもアクセスできるようになるべきです。
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──現在の(20~30代をメインターゲットにする)ニッチ的戦略から、次第に既存生保の方向へ向かうよう株主の圧力がかかる可能性は?
出口 まずライフネット生命の戦略がニッチ戦略だという意識はありません。250年前に誕生して以来、生命保険の本質は、"若くてお金がなく、これから人生にチャレンジする人のリスクを低減する" ということです。だからライフネット生命は、生命保険の本来あるべき姿のど真ん中に風穴を開けるものだと考えています。それと、株主からの圧力という懸念ですが、現在ほとんどありません。これは毎月株主懇談会を行い徹底的に情報公開をしているからだと思います。今後、どんな方向へ進むかという点については、我々が掲げるマニフェストにつきます。世界中でいちばん正直で、わかりやすい経営をする、これが我々の理念です。
──日本の人口減に対して政府はどのような舵取りをすべきでしょうか
出口 かつてフランスは人口の減少に悩んでいましたが、国民の「フランス文化を守ろう」という意志決定のもと「フランス語を話す人口を増やそう」という結論を出しました。そして1999年に導入されたのが、(同棲カップルなどにも結婚と同様の法的権利を認める)PACS制度です。その結果、わずか10年でフランスの出生率は2.0を超えるようになりました。日本もこのような制度を作れば出生率は上向くと思います。子供を増やす政策を、政治家が一生懸命努力することは可能だし、しなくてはいけません。
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ここで時間となり質問は締め切られたが、Twitterアカウントでは引き続きいつでも質問してほしいと強調した。出口社長は最後に、「どんなご意見でも結構ですので、Twitterやブログでライフネットのことを書いていただいたら、それが僕らにとっては一番ありがたい」と述べ、講演を締めくくった。
Twitterで身近になるライフネット生命
ネットユーザーと交流し、リアルの対話につなげたいというライフネット生命保険 出口治明社長。子育て世代にやさしい同社商品にも、還暦ベンチャー社長の動向にも興味あり、という方はぜひ、出口氏のTwitterアカウントをフォローしてみてください。聞きたいことがあれば気軽に質問を!