サイボウズは3月18日、東京都内で事業戦略説明会を開催。同社代表取締役社長 青野慶久氏は、「Google Appsなどには脅威を感じる」としながらも、「グループウェア専業メーカーならではの強み」を生かしながら、今後は一層中小企業やモバイル分野をターゲットとしたビジネスに注力する意向を示した。
同社の主力製品である「サイボウズ Office」の導入企業は2万7000社に達しているが、青野氏は「PCに向かわないと使えない(職場のデスクにいないと使えない)」「ケータイでは使いにくい」「スケジュール共有のためだけのツールだと勘違いされている」「社員同士でしか使えない」「周囲が使い慣れていないから広まらない(みんなに使わせるのが大変)」といったことがユーザーの間に根強く残っている事実を示しながら、このような課題を解消することが同社にとって重要になってくると語った。
青野氏は同説明会において、「もはや"情報共有"だけで生き残っていくことは難しい」という危機感を示したが、同社が今回発表したのは、このような現状に対する具体的な戦略である。この戦略は「場所」「用途」「人」という3つのキーワードが柱となっており、これらはそれぞれ同社の製品に紐付けされたものとなっている。各要素の内容は以下の通り。
キーワード1:「場所」
これは、「サイボウズ Office」を"使える場所を増やす"ということ。上述の「PCに向かわないと使えない(職場のデスクにいないと使えない)」という課題をクリアするための同社の答えだが、カギとなる製品は「サイボウズモバイル KUNAI」(以下、KUNAI)。
同製品はすでにWindows phoneやBlackBerryには対応済みだが、今後はiPhoneへの対応を急ぎ、今夏をメドにiPhoneでもKUNAIを使えるようにする。また、iPhone版の開発によってノウハウを蓄積し、Android版の開発も進める考えとのことだ。
キーワード2:「用途」
2つ目の要素は「サイボウズ Office」の"使える用途を増やす"ということ。こちらは上述の「スケジュール共有のためだけのツールだと勘違いされている」という実情を踏まえたものであり、「サイボウズ かんたんSaaS」(以下、「かんたんSaaS」)が課題解決の役割を果たす。
すでに「かんたんSaaS」上では産業廃棄物業者や製造業に向けた業務特化型のアプリケーションが提供されているが、同社は今後、IT分野以外のパートナー企業による開発を促進し、このようなアプリケーションのラインナップを徐々に増やしていく。
また、データの取り込みだけではなく、「出力」にも注力し、CSV形式のデータ書き出しによって「PCA給与」や「弥生給与」といった他社の業務アプリケーションとの連携も可能にしていく。
キーワード3:「人」
青野氏は「少人数の中小企業では、社内だけでツールが使えても意味がない」とし、取引先など社外のユーザーともツールを共有できる環境の重要性を訴えた。"使える人を増やす"ということがスローガンとして掲げられているが、これに対する同社の答えは「サイボウズLive」。現在は招待制によるユーザー限定のトライアル期間となっているが、「利用に際しての"壁"をなくすため」(同社 SMB 戦略部 野水克也氏)に基本的には無料で提供される(近日中に一般公開予定)。
青野氏は「サイボウズLive」が現在テストマーケティングの段階にあるとしながらも、ビジネスモデルについては「高機能版に課金し、機能限定版は無料にする"フリーミアムモデル"を目指している」と語り、現時点では(画バナー広告などによる)広告収入を得る考えがないことを明らかにした。
なお、今回の事業戦略説明会はUstreamによるリアルタイム動画配信が行われ、質疑応答ではTwitterのつぶやきによって寄せられた質問に対して青野社長が答えるといった一幕もあった。