アビームコンサルティング(以下、アビーム)は3月16日、企業のIT部門の責任者へのインタビューによるヒアリング結果をまとめた「ビジネスに貢献するIT部門への変革」調査レポートを発表した。
今回の調査は、IT部門に期待される役割と現実とのギャップを把握し、ビジネスに貢献できるIT部門になるために必要な取り組みを明らかにすることを目的として、2009年10月から12月にかけて実施された。
調査対象となったのは、東証1部上場で連結売上高が1000億~5000億円の企業のCIOやIT部門長、IT子会社役員で、IT部門の人員が数人~数十人の規模の企業に焦点が当てられている(回答企業は16社)。
同調査では、「IT部門の役割が従来のシステム基盤整備や運用・保守といったものから業務改革の提案・推進といった戦略実現に必要とされるシステムの企画・提案へと変化しているにもかかわらず、実際にこの役割を果たせているIT部門は少ない」とした上でIT部門が抱える問題の洗い出しを行っており、解決のために必要とされる取り組みがまとめられている。
同社によると、期待される役割を果たせない最大の原因は「人」にあり、現在のIT部門は3つの人材不足の問題に直面しているという。
1つは「IT企画人材の不足」。ビジネスに直結するシステムの企画を行うには、ITの専門知識やスキルに加え、経験に基づいた業務知識が不可欠だが、実際にはこのような経験を有する人材がIT部門に配属されることは少ないという実情がある。
2つ目は「開発・保守の後継人材の不足」。この点についてアビームの稲田俊郎氏は記者説明会において、IT部門の約半数の人員が50歳代以上という、ある一次エネルギー産業に属する企業の実例を紹介。「この企業に限らず"高齢化"は日本企業のIT部門が抱える共通の問題」とし、彼らが定年退職した後の技術やノウハウの空洞化が、企業における懸念材料となっていることを示した。
3つ目の問題は「グローバル人材の不足」。これは、本社と海外拠点の標準化の遅れや、文化の違いによるガバナンスの弱さなどが起因する問題で、ビジネスのグローバル化に対応した、グローバルレベルでのシステム企画、開発・保守を担える人材が不足していることが示されている。
同社はこのような問題を解決するために、以下の3つの取り組みが必要であると提言している。
ITのコア/ノンコアの切り分け
ITを"競争力の源泉"ととらえ、調達の難易度や業務に対する重要度などによって「コア」と「ノンコア」に識別し、開発や保守の方向性や方法論を見直す。IT構成(アーキテクチャ)の最適化
つぎはぎだらけの現在の複雑なシステムが運用・保守の負荷、コストを増大させる要因になっていることを踏まえ、シンプルかつ柔軟性のあるシステムに変革する。IT組織・ソーシングの改革
IT部門の"あるべき姿"を再定義し、ジョブローテーションやキャリアパスの明確化などによって計画的に人材を育成し、「人材」を「人"財"」に変える。また、上流工程も含めて(SIerなどの)アウトソーサーと協業体制を築き、これも人材育成の場ととらえる。