米Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは3月15日、、PCI Express(PCIe)3.0に対応した測定ソリューション「デジタル・テスト・コンソール」を発表した。

デジタル・テスト・コンソール「U4300A」シリーズのアナライザとプローブ

同コンソールは、PCI-SIGで規格策定が進んでいるPCI Express 3.0 x1からx16対応のプロトコル・アナライザ「U4302Aシャーシ」「U4301A PCIeアナライザ」およびエクセサイザ「U4305A PCIe エクセサイザ」、プロービング「U4321A インタポーザ」「U4322A ミッドバス」で構成されるプラットフォーム。

デジタル・テスト・コンソール「U4300A」シリーズのソリューション概要

PCI Expressは、チップとしての規格「Base Specification」に加え、チップをシステムとしてモジュール化したCard Electromechanical(CEM) Specification、そしてCEM Specificationに基づいて試験方法を記載したTest Specificationが制定される。チップメーカーやIPベンダが開発を終えなければ、PCIe 3.0に対応したシステムは世の中に登場できないが、ではそうしたチップメーカーでのチェックはどうやって行うのか、同コンソールはそうした開発にも対応可能なソリューションとなっている。

PCI Expressの信号速度はGen1で2.5G Transfer/sec(T/s)、Gen2では5GT/sと2倍の速度向上を実現してきたことから、Gen3ではさらに倍の10GT/sを目指すのかというと、電気的な制御の難しさなどの課題があるため8GT/sがターゲットとなっている。8GT/sでも十分に早いわけだが、これでは帯域の倍増にならない(5GT/sからGT/sでは1.6倍)。

Agilent Technologiesのデジタルテスト製品ロードマップ

転送速度の2倍化を目指して考えられたのがエンコード方式の変更。従来の8ビットのデータから10ビットのデータを生成して送信する「8b/10b」から、「128b/130b」へと方式を変更することで、転送速度は約1GBpsとなり、Gen2の500MBpsから、ほぼ倍の転送速度を実現できることとなる。

ただ、下位互換性を確保するためには8b/10bもGen3では同時にサポートできる必要があることを考えれば、現状でも高速伝送の測定に相当な困難が伴うことを考えれば、その対応がさらに困難になる。特に現在は、Gen3に対応したターゲットがない状態のため、半導体ベンダがGen3対応のチップを作ることさえもままならない。例えば、プロービングして8GT/sでイコライジングされていない信号をアナライザで見ても、波形が重なりすぎて何をどう見たらよいのかがまったく分からない状態となってしまう。

PCI Express 3.0における課題とその内の1つであるプロービング

Agilentでは、こうした高速伝送に対する要求に対応するため、ASIC「ESP(Equalization Snoop Probe)」を開発。同ソリューションに取り入れることで、信号の信頼性向上やオートチューニングによるプローブをどこのポイントにつないでも最適なアナライズを可能とするなどの機能を実現しており、先述のような8GT/sのポロービングでもきちんと8GT/sでイコライジングされているため信号波形を確認することができるようになる。

PCI Express 3.0ではプロトコル層の仕様変更に対応する必要がある

また、新しいエンコードやプロトコル・ステートマシンの対向試験を行うことができるLTSSM(Link Training Sequence State Machine)テスタ機能をエクセサイザに搭載。これにより、擬似的に8GT/sの信号を発生させることができるようになり、設計検証時の対向テストが可能となる。

さらにU4305Aは、エクセサイザやLTSSMテスタ機能のほか、Test Specificationが制定された後には、「PTC 3&コンプライアンステスト」および擬似的にエラーを発生させる「ジャマー」といったアプリケーションにも対応する予定だ。

将来のテストニーズにも対応が可能

同社では「これまで培ってきたPCIe分野での強みを生かすことで、PCIeに関わるそれぞれの層(半導体チップやサーバベンダ、映像機器ベンダ、組込機器ベンダなど)をサポートしていく」(アジレント・テクノロジーの電子計測本部 マーケティング・センタ デジタル・デバッグ・ソリューション担当である堀部勝義氏)とするほか、「こうした分野では、オシロスコープに加え、このようなアナライザを使わないと、もはや何をやっているのかわからなくなる危険性がある分野。そうした複雑な分野で苦労している開発者の手助けになれれば」と、積極的にサポートしていくことで、より多くのカスタマとの密接な関係構築を目指していきたいとしている。

幅広いカスタマに向け、さまざまな価値を提供

なお、すでにソリューションとして提供を開始しており、価格はプロトコルアナライザが640万672円(税別)から、エクセサイザが174万7,549円(税別)から、プローブが128万4,262円からとなっている。

メモリリードなどのさまざまな機能をドラッグ&ドロップで簡単に設定できるほか、サーチ機能により関連機能だけを表示させることも可能

Gen3になり、エンコード方式が変更となったので、生データに近い状態で確認ができたり、パケットビューを用いることでトークンとして表示された各動作を確認することができる。ただし、レイヤ自体の表示は従来どおりの形であり、物理層以下までは手を加えていないとのことで、互換性を維持することが配慮されている