民間気象会社ウェザーニューズの超小型衛星「WNI衛星」の開発が大詰めを迎えている。同社が資金を提供し、東大発ベンチャーであるアクセルスペースが開発しているもので、大きさは一辺27cm、重量は10kg弱。可視光と赤外線のセンサを搭載しており、北極の海氷を観測する予定だ。

アクセルスペースが入る東葛テクノプラザ(千葉県柏市)

中村友哉CEO(左)と宮下直己CIO(右)。中央がWNI衛星の試作機

現在、日本には衛星メーカーとして、三菱電機とNECの2社があるが、アクセルスペースはもっと小型の衛星を開発することを目的として、中村友哉CEOらが設立した。数トンクラスの大型衛星になると、開発期間は長く、コストも数百億円という規模が必要となる。衛星を小型化して、もっと早く、安く、たくさん打ち上げられるようにするのが狙い。そうなれば、一般の企業でも自前の"マイ衛星"を持つことが可能となる。

WNI衛星のミッションは以下の2つだ。

1つは北極海の海氷を観測すること。地球温暖化により、北極海の海氷面積は減少しており、このまま進行すれば、航路としての利用が活発になると見られている。そうなると、海氷との衝突を予防するために、経路における予測情報が重要となってくる。ウェザーニューズはWNI衛星を使って、船舶会社にそういった情報を提供する。

もう1つは、大気中の温暖化ガスの観測である。レーザービームを衛星から照射し、地上で計測。二酸化炭素による減衰を調べることで、その濃度が分かるようになる。観測には、企業・学校・一般サポーターからの協力を募り、温暖化防止への意識の向上も狙う。

アクセルスペースは、創業と同時期の2008年夏にこの衛星の開発を受注。エンジニアリングモデル(EM)の製造を1年ほど前から開始しており、2010年3月3日に完成した。今後、このEMを使って振動試験や熱真空試験などを行い、6月より、実際に宇宙に上げられるフライトモデル(FM)の開発に進む予定。

完成したWNI衛星のエンジニアリングモデル(EM)。本来なら側面に太陽電池も貼られる

地球側はこの底面。観測カメラの穴が2つ見える。その奥にはレーザー用の小さな穴もある

軌道上では磁気センサのブームを展開する。ノイズ発生源の本体からはなるべく離すためだ

同社オフィスにはクリーンルームも完備。フライトモデルの開発もここで行う

打ち上げには、インドのPSLVロケットを利用する(相乗りサービス)。当初、打ち上げは2011年とされていたが、ロケットの順番が変更になったそうで、早ければ2010年10月にも宇宙へ飛び立つ。

「ようやく衛星の形が見えてきて、いよいよ打ち上げに向けて開発も最終段階に入っていきます。超小型衛星という新しい宇宙ビジネスを軌道に乗せ、真に役立つ社会インフラとして育てていくために、何としてもこの1号機を成功させたいと思っています」と中村CEOは意気込む。

超小型衛星は、研究・教育を目的として大学などで盛んになっていたが、今後、産業としての発展も期待されている。その先駆けとなるアクセルスペースのWNI衛星については、これからも注目していきたい。