Analog Devices(ADI)は3月11日、20ビットの分解能と精度を実現したD/Aコンバータ(DAC)「AD5791」を発表した。すでにサンプル供給を開始しており、2010年8月より量産開始を予定。単価は米国の参考価格で1,000個受注時で38ドルとしている。
同製品は、20ビットの分解能と精度を実現するため、新たなプロセスを用いたことによるトランジスタ性能の向上、抵抗やスイッチの回路設計の見直しによる低ノイズアンプながら低消費電力の実現、各抵抗部の性能均一性を高める補正技術などを導入したという。
ADIの日本法人であるアナログ・デバイセズのマスマーケット統括部 セントラルアプリケーションズ マネージャの藤森弘己氏は、「結果として、既存の18ビットDAC比でリニアリティ誤差を1/4に低減し、かつ分解能が4倍となる1ppmを実現したほか、ノイズは同13nV/√Hzから9nV/√Hzへと30%の低減やVoffドリフトを0.15ppm/℃から0.05ppm/℃へと低減することに成功した」とその性能を語る。
また、回路的に内蔵オペアンプを搭載。フィードバックとマッチング抵抗による駆動アンプの選択を容易とした。さらにデバイス単体での電圧出力にも対応しつつ、外部に増幅用のオペアンプを接続した場合でも、従来回路ではノイズゲインの影響でノイズが最大で4倍に増幅されてしまうのに対し、ノイズゲインが1のため、ノイズゲインを抑制することができる回路構成が可能となったことから、リニアリティ誤差1ppm(1万Vで10mV)を実現した。
リフレッシュレートは1μsで、出力範囲はユニポーラは+5V、+10V、バイポーラは±5V、±10V、電源は±7.5V~15Vに対応する。
主なターゲット領域は、「ADIのフラッグシップ製品として、高い機能を要求される分野を狙う」(同)としており、主な分野としては3テスラを超すようなMRI/NMRIなどの医療機器や、半導体テスタや研究室などで用いられる測定器、電源制御、nmオーダの制御が要求される最先端プロセス向け半導体製造装置などを挙げる。日本ではMRIを開発/製造しているメーカーが限られていることもあり、半導体製造装置やテスタ、測定器などの分野に注力するとしている。
なお、1,000個受注時38ドルという単価については、「相当思い切った価格。既存の18ビットDACよりも安い設定だと考えている」(同)とし、「このデバイスを活用してもらうことで、これまで例えばトランジスタなどで構成された18ビットのDACモジュールは100万円とも言われていたものを1チップで、かつ低コストで製造することが可能になる」(同)というメリットなどを含めて市場に展開を図っていければとする。
また、今後の製品ロードマップについては、同製品がどれくらい市場に受け入れられるか、という前置きながら、回路技術などは18ビットや16ビット品などに応用が利くほか、要求があれば2ch対応品や4ch対応品なども開発が行われる可能性があるとした。