STMicroelectronicsは3月10日、同社のEEPROMファミリとしてマイコンやASICとの通信を行うI2CインタフェースとRFIDリーダとのワイヤレス通信をサポートするISO15693準拠のRFインタフェースを搭載した64KビットEEPROM「M24LR64」を発表した。TSSOP-8、SO-8、MLP(2mm×3mm)の各種パッケージで提供され、すでにサンプル出荷を開始、単価は1,000個購入時で約0.90ドルとしている。
STMicroelectronicsのMicrocontrollers, Memories&Smartcards(MMS)Group Memory Division(MMY) RF Memory Technical Marketing ManagerであるSylvain Fidelis氏 |
これまで別々に分かれていたRFインタフェースとシリアルインタフェースを融合したことについて、同社のMicrocontrollers, Memories&Smartcards(MMS)Group Memory Division(MMY) RF Memory Technical Marketing ManagerのSylvain Fidelis氏は、「シリアルインタフェースを用いてきたカスタマもRFの需要が出てきた。まあ、RFインタフェースを用いてきたカスタマもシリアルインタフェースを求めるようになってきており、これらを融合させた市場が新たに形成されつつある」と市場を分析する。
RFID部の通信距離は約1mで、転送速度は高速モードで53Kbpsを実現。パッシブ型のためRFIDリーダからの電波により、メモリアクセス時にボードからの電力供給を受ける必要がないのが特長。
RFIDが活用できるため、例えば商品情報やパラメータ、製造履歴などの各種データを、基板、製品、箱詰め後といった各段階で更新することが可能となるほか、独自の32ビットパスワード保護機能によりファームウェアなどをセキュア、かつ梱包後などでも開封などの手間なく更新することが可能となる。
また、I2C/RFアービトレーションユニットを搭載したことで、マイコンがEEPROMのデータを読み込みなどを行っている際にRFリーダよりデータが送信されてきても、データの混信、衝突を回避、マイコンからの処理を終えた後にRFリーダからの処理を実施することが可能だ。
さらに、通信アンテナについてはリファレンスデザインでの提供のほか、4つのオプションとして、「オンボード」「ドータボード」「オフボード」「小型インダクタ方式」を用意、用途や機器の形状に合わせた活用を促すという。
同製品の量産は2010年第2四半期を予定。また、2010年下期には新製品を発表する予定としている。この新製品についてFidelis氏は、「容量が異なるものを提供していく計画。周波数帯の変更については、ISO15693がチップやRFリーダが他の周波数帯に比べ安く済むほか、距離などもベストのバランスを有している。UHF帯などは確かに距離を長くできたりするがコストが高くなるなどの問題がある。市場からの要求は低コストなもの、ということでこの判断は間違っていないものと思っている」とその方向性を語る。
ターゲットとする市場はさまざまだが、従来のEEPROMとのピン互換性を持たせていることもあり、新市場の開拓と平行して既存製品の置き換えを狙っていくとしている。