ガートナー ジャパンは3月9日、全世界で1,600人以上のCIOを対象に実施した「2010年のCIOの課題」に関する調査結果を発表した。同調査に回答したCIOは世界41ヵ国の企業・政府・公共機関に所属し、そのIT予算の合計は12兆円以上に達する。
日本からは50人のCIOが調査に参加し、回答企業のIT予算合計は1兆1,000億円超、1社当たりのIT予算は225億円程度になる。
同社は、日本のCIOとグローバルのCIOの違いについて分析している。2010年の景気動向について、「2009年同様に景気後退傾向が継続する」と回答した割合が、世界のCIOは41%だったのに対し、日本のCIOは60%に達し、景気回復について弱気に予測していると、同社では見ている。
前年対比でIT予算が増加すると回答した割合は、日本のCIOは3割弱、世界のCIOは4割だった。一方、IT予算が減少すると回答した日本のCIOは3割程度であるのに対し、世界では2割程度と、日本では景気動向がIT予算により強く影響していることがうかがえる。
CIOが回答したビジネス面の優先度ランキングにおいて、日本の第1位は「企業コストを削減する」だった一方、世界の第1位は2005年から6年連続で「ビジネス・プロセスを改善する」だった。この回答について、景気回復についての見方の相違が大きく影響していると、同社では分析している。
同社はこうした結果より、日本の企業は世界各国の企業に比べて景気面で出遅れ感を強く持っており、これが企業のIT予算にも強く影響していると指摘している。2009年は全世界で景気悪化の影響から、IT予算も「可能な限り低コストで一定の結果を出す」という効率最優先の状況だったが、日本では2010年もその方向性は大きく変わらないという。しかし、世界を見ると、先進企業はすでに効率化から脱却し、新規IT投資による生産性の向上へと方向性を大きく修正していることがわかったとしている。
同調査では、2010年のテクノロジー面における優先度についても聞いているが、日本と世界ともに2009年から大きく変化している。2009年は日本と世界のトップが「ビジネス・インテリジェンス」だったが、2010年は日本で第4位、世界で第5位となっている。
2010年は仮想化、クラウド・コンピューティング、Web2.0といったテクノロジーへの期待感が高まっているが、これらは初期投資が少なく、変動費的構造を持つことが期待されているという。さらに、これらは必要な自社内のサポート・リソースも少ないと考えられているため、CIOから見た場合に「軽量化テクノロジ」として評価され、全世界のCIOは「軽量型を実現するテクノロジーが、企業にとってより大きなケーパビリティの源泉になる」ことを期待していると、同社では見ている。