日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)はこのほど、2010年度のパートナー事業に関する施策に関する説明会を行った。同社は今年度、パートナーと連携することで、全国カバレッジを強化していくとともに、パートナーと共同でクラウドコンピューティング関連のビジネスを推進していく。
執行役員 パートナー&広域事業担当を務める岩井淳文氏は、同社の2010年度のパートナービジネスの柱は「原点にかえった支援と施策の展開」、「パートナーのビジネスの最大化を支援する施策の展開」、「新しい時代へのパートナー事業創造の支援」の3点と説明した。
パートナー事業に関する新たな施策としては、今年1月に、パートナー事業の部門と全国の中堅・中小企業のビジネスを担当する部門を統合し、「パートナー&広域事業」という部門が発足した。その狙いは、これまで同社が手薄だったSMB市場のカバレッジを広げることにある。
「実のところ、中堅・中小企業の市場は当社の得意分野ではない。同市場のシェアを獲得する際に重要なことはカバレッジだ。全国を網羅している国内ベンダーに対抗するために、当社としてはパートナー企業と協業して仮想的に人数を増やしていく」
同社は今年SMB市場を攻略すべく、「サービスにおけるパートナーと日本IBMのポジショニングの明確化」、「パートナーのサービス再販のためのビジネスモデル確立」などを実施する。
同氏は、「これまでパートナー企業と当社はシステムを提供する際、サービスにおいて競合や重複が発生していたので、それをなくしていきたい」と説明。同社はSMB市場において、パートナーのサービスの販売を支援し、パートナーのソリューションを中心としたハードウェア/ソフトウェアビジネスに注力するという。
また、パートナーのサービス再販のためのビジネスモデルとして、「SOP(サービス・オリエンテッド・パートナー)」が今年2月に発表されている。同モデルは、クラウドコンピューティングを中心としたWebベースのソリューション/サービスを対象としている。
同モデルでは、IBMが協業サービスパートナーにハードウェア、ソフトウェア、それらに付随するサービスを提供し、協業サービスパートナーがサービスインテグレーターやリセラーと連携して顧客にサービスを提供する。
協業サービスパートナーは、「サービスの企画・開発・提供とメンテナンス」と「課金や契約などのビジネス管理」を行う「ビジネス・プロバイダー」、アプリケーションやミドルウェアの開発・提供・保守を行う「ソリューション・ベンダー」から構成される。
ニフティやソフトバンクなどがすでにSOPを用いてビジネスを始めているという。
現在、116社の協業サービスパートナーがSOPに参加意向を表明しており、今年末までに参加パートナーを300社にまで拡大していく。4月からは、先行事例パートナーのサービス商材の再販モデルを開始する。
同氏は「クラウドサービスの導入はオンプレミスのソフトウェアをリプレースすることになり、SOPモデルはメーカーにとってリスキーなビジネスモデル。しかし、当社はSMB市場においてシェアが低いので、共食いを起こすリスクが少ないので、問題がない」と述べた。
加えて、これまではIBMが売りたい製品やサービスをパートナーが販売するための仕組みや支援プログラムを実施していたのに対し、パートナーが販売したいソリューションに関連するIBM製品を組み合わせて販促できる仕組みや支援プログラムを整備していく。
同氏はSMB市場にクラウドサービスを積極的に売り込んでいくことについて、「SMB市場はIT化が進んでいない、与信が通らないといった企業も少なくない。しかし、こうした企業も月額500円で利用できるクラウドサービスなら使うことができる。言い換えれば、中堅・中小企業もクラウドサービスの活用により、大企業しか使えなかったITサービスを利用可能になる」と説明した。
同氏によると、これまではサービスビジネスにおいてパートナーと競合や重複が起こっており、パートナーの間にはIBMに対して"競合するのではないか?"という"疑心暗鬼"の気持ちがないわけではないので、今後はパートナーの立場に立った"100%協業"の姿勢で臨んでいきたいという。
大企業を主戦場としているイメージが強いIBMがSMB市場でどれだけシェアを獲得できるのか。全国に販売網を敷く国内ベンダーもSMB市場に対する攻勢を強めているだけに、同市場での競争はますます激化するだろう。