米Microsoftは3月5日(現地時間)、中堅企業向けに提供していた同社サーバスイート製品「Windows Essential Business Server (EBS) 」の開発を今年6月いっぱいで終了すると発表した。今後も通常のライフサイクルサポートは継続されるものの、Windows Server 2008 R2をベースにした次世代バージョンはリリースされないため、同社では代替製品としてWS 2008 R2やBusiness Productivity Online Suite (BPOS)などの提案を行っている。
従来まで小規模用オフィス向けとして「Windows Small Business Server (SBS)」というサーバスイート製品がリリースされていたが、ドメインコントローラの制限などスケーラビリティ上の問題もあり、Windows Serverよりも手軽で安価に扱え、SBSより高いパフォーマンスや比較的大きな企業組織をカバーできるソリューションとして2008年に登場したのがEBSだ。Windows Server 2008をベースとしており、ExchangeやSQLなど各種サーバ製品がスイートとしてシンプル化された1つのCAL体系で提供されている。
中小企業(SMB)向け製品の中規模企業をターゲットとすべく誕生したEBSだが、Microsoftによれば過去2年間の技術進化ですでにより安価で効率的な処理が可能なソリューションが登場しており、次世代バージョンを開発しても顧客を混乱させるだけというのが今回の決断に至った理由だと説明する。今回の決定でWindows Serverの他の製品群には影響はなく、EBS終了後もSBSについては継続して次世代版開発を続けていく意向だと同社では説明しており、社内競合の可能性も含めてすでにEBSの需要がなくなり、顧客の目も新技術へと移っていた可能性がある。
この中で同社が技術変化の大きな分岐点として挙げている新技術が「仮想化(バーチャライゼーション)」と「クラウド」だ。前出のEBS代替製品として挙げられているBPOSは複数のサーバ製品を組み合わせたクラウドサービスであり、Windows ServerやAzureなどとの組み合わせでより効率的なシステムを構築できるという。EBS開発チーム解散後、メンバーはWindows Serverとクラウドのチームへと分けられ、今後もSMB向けソリューションの開発を続けていくことになる。
今回のEBS開発中止表明から1つわかることは、Microsoftがクラウドへの比重を非常に強めていることだ。同社CEOのSteve Ballmer氏は先週4日、米ワシントン大学で開催された講演の中で「Microsoftの未来はクラウドにあり、WindowsからWindows Phone、Xboxまであらゆる弊社製品がクラウドにつながる状態を目指す」と語っている。Windows AzureやBing、Live Servicesなどはその中核となり、「ソフトウェア+サービス」と言いつつ、どちらかといえばサービス部分を非常に強化しているのが現在の同社だ。またMicrosoftは先月2月24日、BPOSをベースとした政府など公共機関向けのクラウドサービス提供も発表している。Windows Azureについてもテストユーザーを含めて順調に顧客を増やしつつあり、クラウド時代に向けた第一歩を歩みつつある。