産業技術総合研究所(産総研)と東洋鋼鈑は、薄膜太陽電池の1つであるCIGS太陽電池において、低コスト金属基板を用いて高い変換効率を達成したことを発表した。
これまでCIGS太陽電池では、薄膜に悪影響を及ぼさないチタン箔やモリブデン箔がベース金属基板として用いられてきたが、大面積材料の供給やコスト面などの問題があり、ステンレス箔など安価な材料の検討が進められているが、金属基板の成分が太陽電池の高温成膜時にCIGS層に拡散し、発電効率を阻害するという問題が存在していた。
今回、東洋鋼鈑において、ステンレス箔と比較してより低コスト化が可能な低炭素鋼ベースの極薄金属基板を開発。表面処理を行っていないベース材単体では、従来のチタン箔の1/10以下、ステンレス箔の半分程度、ポリイミドの1/4程度の価格での製造を実現した。
また、CIGS太陽電池の高効率を阻害する元素の拡散を、独自の表面処理膜で抑制。従来は拡散防止膜の成膜には高コストな真空プロセスが必要とされていたが、同社では、大気中成膜により低コスト化を可能とした。
一方の産総研では、CIGS太陽電池開発において、世界最高レベルの変換効率を達成しているほか、金属基板ベースのフレキシブル太陽電池の開発なども行ってきており、大面積モジュール向けの低コスト基板の検討なども行っていた。
今回、産総研では、東洋鋼鈑が開発した表面処理が施された低コスト金属基板を用い、CIGS太陽電池の試作を行い、小面積セルで真性変換効率16.7%(セル発電面積約0.5cm2)を達成した。
なお、東洋鋼鈑では、今回開発した材料を2011年ごろに製品化し、幅広い分野に向けて展開していくことを計画している。