ロームは、高温時でも安定動作を可能にした2波長半導体レーザ3機種「RLD2WMUL3」「RLD2WMFL3」「RLD2WMNL2」を開発したことを発表した。
従来、DVDやCDの再生用半導体レーザは、その導波構造として「ロスガイド」が使われているが、同社は光の吸収損失が少なく信頼性に優れた「リアルインデックスガイド」を再生用として採用、ロスガイド品に比べ低消費電流と安定動作を実現した。
ロスガイドは構造が簡単でコストが安い反面、レーザ光を発振する際に、デバイス内部に光を吸収してしまう傾向があり、高温時の動作が不安定になっていた。一方のリアルインデックスガイドでは、デバイスが光を吸収してしまうことがなく安定動作が可能だが、製造工程が複雑で製造コストが高く、主に高出力用レーザに使われていた。
今回ロームでは、リアルインデックスガイドを低出力用途に合わせて新たに設計することで、高信頼性のDVD/CD再生用2波長レーザの開発に成功したという。
「RLD2WMUL3」および「RLD2WMFL3」は、ゲーム機やポータブル機器、スリムドライブ向け製品で、従来の動作保証温度75℃のレーザに比べ、消費電流をDVD使用時で30%減、CD使用時で46%減とすることで80℃の動作保証温度を実現している。
2製品のパッケージは、車載用などに適した高放熱の5.6 ØCANパッケージタイプ「RLD2WMUL3」(サンプル価格は1,000/個)とゲーム用などのポータブル民生機器に適した樹脂フレームパッケージタイプ「RLD2WMFL3」(サンプル価格は800円/個)の2タイプを用意。量産を2010年3月から当面月産100万個の体制で開始する計画としている。
一方の「RLD2WMNL2」はカーDVD、カーナビ向け製品。従来の車載用の純正DVD/カーナビでは、メーカーから動作保証温度が85℃に指定されているが、高温下における光の吸収損失を相殺するため、チップ長(共振器長)と発振波長を長めにとり、温度特性を改善していた。しかし670nmまで波長が長い設計にすると、655nmの波長に最適化されているDVDでは、データの読み取り時に不安定になるリスクがあった。特にDVD-Rなど有機膜を変色させるタイプのディスクでは、波長のバラつきに対する許容範囲が狭く、音飛びなどの原因となっていた。
同製品では、従来品に比べ動作電流をDVD使用時で44%減、CD使用時で43%減(85℃動作時)とすることでチップ長や発振波長を長くすることなく、高温での安定動作を可能とし、音飛びや誤動作に対して安定動作とセット設計の簡略化を可能とした。
また、パッケージはガラスウインドウのある完全封止CANパッケージを採用しており、車内環境に対しても高い信頼性を実現することができる。すでに量産は2009年11月から月産10万個の体制で開始しており、サンプル価格は2,000円/個となっている。