P2Pのファイル共有ソフト「Winny」ユーザーに対し、著作権管理団体がISPを通じて啓発・警告メールを送付する作業が、3月1日から開始される。著作権管理団体とISPで構成されるCCIF(ファイル共有ソフトを悪用した著作権侵害対策協議会)が定めたガイドラインに基づいで行われるもので、アップロード、ダウンロード、中継ダウンロードいずれも、著作権を侵害しているユーザーを対象にメール送付が実施される。
著作権侵害ユーザーに警告メール
今回のガイドラインは、2007年の警察庁総合セキュリティ対策会議の報告書に基づいて設立されたCCIFが、検討を続けてきたもの。ファイル共有ソフトを悪用して違法アップロードや違法ダウンロードをしているユーザーに対し、ISPからの警告メール、ISPによる該当ユーザーのアカウント停止、著作権者からの損害賠償請求といった方策を検討してきた。その結果、今回警告メール送付のスキームが固まり、実際の運用が開始されることになった。
スキームでは、著作権管理団体がWinny用の著作権侵害ファイル確認ツールを使い、Winnyネットワーク上で流通しているファイルを入手。内容を確認して、それが著作権を侵害しているものだった場合、それを流通させていたユーザーのIPアドレスやタイムスタンプなどの所定のデータをISPに送付し、それをもとに警告メール送付の要請を行う。
それを受け取ったISP側では、IPアドレスなどの情報から実際にWinnyを利用しているユーザーを特定し、そのユーザーに対して著作権を侵害している旨を警告するメールを送付する。
今回のスキームでは、この警告メールの送信までしか行わないが、メール送付によって著作権侵害行為の推移を見るなど、運用状況を確認。今後、さらに損害賠償請求などの著作権者による対抗措置やISPによるアカウント停止などの防止措置をとるかどうか検討していく。
状況が好転しない場合は、蓄積してきた侵害状況の情報を活用することで、違法ダウンロードに対する罰則を求める活動に生かしていくことも考えるという。
ユーザーには自主的な利用停止を望む
これまでも、著作権管理団体は独自に著作権侵害行為に対する啓発・警告活動を実施してきた。今回のスキーマではISPと連携することで、著作権管理団体側が、法に基づく発信者情報開示請求を行わなくてもユーザーを特定して警告メールを送付できるようになった点が大きい。さらに、テレコムサービス協会、電気通信事業者協会(TCA)、日本インターネットプロバイダー協会、日本ケーブルテレビ連盟というISP団体4団体が参加し、加盟ISP600社の協力を得られることとなっている。
CCIFでは、すでにトライアルとしてISP5社とともにスキームの運用テストを行っており、まず3月1日からはこの5社のユーザーを対象に運用を開始。4月以降、順次対象となるISPを拡大していく予定だ。
「ファイル共有ソフトを使った著作権侵害行為では、軽い気持ちで利用している利用者もいる」(CCIF・桑子博行会長)として、啓発・警告メールの送付は重要であるとの認識だ。これによってWinnyによる著作権侵害が減少しなければ、「(損害賠償や法改正といった)強制力を働かせなければならない」とCCIF会長代行でコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事の久保田裕氏。
久保田氏は、著作権侵害を繰り返す結果、より自由なインターネット利用を損なう法改正につながるなど「自分の首を絞めることになる」と警告。メールの段階でユーザーが利用をストップする自主的な対応を促したい考えだ。
CCIFでは、今後、Winny以外のファイル共有ソフトに対しても、ツールの確認を進めて対応を拡大していきたい考えで、著作権侵害に対して積極的に対策を打っていく意向を示している。