学生のオンラインでの行動は学校の管轄範囲か? 米国でSNSに担当教師の非難を書き込んだ女子高校生に対し、学校側は学外活動を禁止する処分を決定、この措置を不満とした生徒の訴訟を巡り、裁判所が下した判断が話題となっている。
事の経緯は2007年にさかのぼる。当時18歳の高校生だったKatherine Evans氏は担当の英語教諭が気に入らなかったため、「Ms. Sarah Phelps is the worst teacher I’ve ever met! (サラ・フェルプはわたしがいままで知ってるなかで最悪の教師)」と題したグループをFacebook内に開設、教師の写真を掲載するとともに「不満やうっぷんをぶちまけよう」と友人らにグループへの招待状を送った。ところがコメントは3件しか集まらず、それらはすべてEvans氏を非難するもので、全員が教師を擁護したという。その後、Evansはすぐにグループを閉鎖した。
ところがこの騒動を知ったEvans氏の通う米フロリダ州マイアミ近郊のPembroke Pines Charter High Schoolでは、彼女の校外での3日間のスピーチ活動を禁止措置を下した。また結果としてAdvanced Placement (AP) Englishクラスから外されることになった。Evans氏はこの決定を不服として同校校長を提訴。クラス降格で成績記録に傷が残ったこと、そして校外でのインターネット活動の制限は修正合衆国憲法第1条の表現の自由と第14条の市民権に違反するものであると主張している。Evansによる訴状はここで確認できる。
今回の訴訟での争点は停止措置による経歴への損害部分よりも、学校がどこまで学生の課外活動を規定できるかという点にあった。これまで同種ケースの問題は多々あったものの、最高裁判所が具体的にインターネットでの学生による中傷行動について学校の領分を規定した判決はなかった。だがArs Technicaなどの2月16日(現地時間)付けの報道によれば、今回のケースで治安判事のBarry Garber氏は、原告のEvans氏の行動はあくまで校外である家庭でのものであって、何ら学校に損害を加えるものではないとし、学校側による裁判取り下げ請求を棄却した。これにより、Evans氏は当時の判断と実際に被った損害について学校側に対して裁判を起こすことが可能になった。
裁判が起こされたのは2008年のことで、ここまで二転三転して経過が長引いたのには理由がある。同校校長のPeter Bayer氏が生徒の訴訟に対し、「Qualified Immunity」という連邦最高裁判所の免責規定を引用したことが原因だ。これは、政府組織が、訴訟相手の認識している範囲で職務を全うしていた場合、訴訟取り下げの免責が与えられるというものだ。そのため、Evans氏の学外でのインターネット活動──この場合はFacebookでの中傷行動──が、学校の管轄範囲の出来事かについて議論が展開された。この初のケースともいえる判断が問題となり、状況が膠着状態にあったといえる。今回の裁判所の判断により、学外でのインターネット活動は個々人の責任によるものとなり、学校が規定するものではないとの前例が出来たことになる。