昨年2009年12月25日に発生したアムステルダム発デトロイト行きデルタ航空機での爆発テロ未遂事件以降、米国内および米国行き航空機の乗客へのセキュリティが大幅に強化されている。ところが米運輸保安局(Transportation Security Administration: TSA)は2月17日(現地時間)、これらルールをさらに強化する方針を発表した。ランダム検査のサンプル数を大幅に増やすほか、持ち込み荷物のさらなる規制強化など、今後米国への旅行客に大きな影響が予想される。

この新検査態勢については米Wall Street Journalの2月17日付けの記事が詳しい。「When Security Takes Longer Than the Flight」というタイトルからもわかるように、カナダやメキシコのような隣国からの移動であれば、もはやセキュリティ検査にかかる時間のほうが長いというレベルのものだ。

現在の米国行きフライトでのセキュリティ検査ルールは、主に液体物の持ち込み禁止に、ゲートでの全手荷物とボディチェックが中心となっている。昨年12月25日以降はこれに加え、米国到着の1時間前からは着席義務でトイレ等での移動も禁止されるルールが適用されている。だが今回はこれに加え、危険物質チェックのために、乗客の手とすべての手荷物について紙や綿を使っての薬物スキャンが行われる。実際の検査の様子は、NBC Dallas-Fort Worth (DFW)に掲載の画像を参照してみるといいだろう。このほか、財布や手持ち書類の全検査なども加わる可能性がある。これは米国50州行きのフライトの全乗客に適用され、ランダム検査も空港の入場ゲートだけでなく、待機エリア内でも実施される可能性があるという。TSAでは全乗客に対して出発時間の3時間前集合を通知しており、「米国入国者は非常に苦痛を強いられるだろう」と前置きしつつ、今後全身ボディスキャナーが全面導入されるまで長期間にわたって実施していく措置であることを強調する。

一部の国では、米国への旅行者に対してさらに厳しいルールを設定しているケースもある。たとえば米国移動者の数が多いカナダでは、数時間単位のフライト遅延が常態化している。そのためルール厳格化である程度対処しようとしており、持ち込み荷物を1つに限定する方針を打ち出している。現在、一般的には飛行機持ち込み荷物として「バッグ1つ」に「手荷物1つ」がルールで定められている。このバッグにはキャスター付きのキャリーバッグが含まれるが、今後はこれを禁止して、手荷物1つに限定するという。このタイプのバッグを持つ乗客は、必ずチェックインカウンターで預けなければならない。

カナダ以外の国でも、「持ち込みバッグは1つまで」のルール適用がみられる。たとえば米アメリカン航空の親会社のAMRでは、欧州から米国行きの便の乗客に対し、手荷物1つのみのルールを通達している。例外はファーストクラスまたはビジネスクラス、あるいはエリートクラスのメンバーのみで、それ以外の多くの乗客は持ち込み荷物が1つに制限される。

原油価格の高騰以降、収益確保のために大手航空会社らの多くは預け入れ荷物1つにつき20 - 30ドル単位の課金を実施している(アメリカン航空の例)。そのため、可能な限り機内への持ち込みを試みる乗客が増えており、これが混雑の原因のひとつとなっている。このルールは国際線等では免除されているものの、荷物収納に関するトラブルは日常茶飯事となっており、今後も大きな混乱が予想される。

ただでさえ時間がかかる手荷物検査がさらに時間がかかることになりそうなヨカン。空港の混雑&飛行機の遅延は、まだしばらくつづきそうだ…