マイクロソフトは、同社パブリックセクタービジネスにおける取り組みについて説明。2010年度には、3つの自治体と地域活性化協働プログラムにおいて提携する方針を示した。
パブリックセクターは、自治体連携や教育分野、ヘルスケアビジネスなどを担当する部門。マイクロソフトの執行役常務パブリックセクター担当の大井川和彦氏は、「パブリックセクターは、ヘルスケア、アカデミック分野が高い成長を継続している。とくに、ヘルスケア分野では、電子カルテや医事会計システムなどの大規模なシステムではなく、医師と看護士のコミュニケーションや、病診(病院と診療所)との連携、医療機関と地域の連携といった領域でマイクロソフトのツールを活用してもらい、医療サービスの提供を加速するといった事例が出ている。この分野では前年比で15%以上の成長率を継続して示している」などとした。
教育分野においては、高等教育機関と連携したIT活用基盤の整備および人材育成、初等中等教育との連携による学校と家庭をつなぐシームレスなIT環境を通じた先進的な教育環境の構築を行うといった取り組みのほか、スクールニューディールによる追い風もあり、「教育分野でも前年比15%以上の成長率となっている」とした。
一方、自治体連携において、中核的な取り組みとなる地域活性化協働プログラムにおいては、2009年実績として、高知県/佐賀県/鳥取県/徳島県の4つの自治体で展開した成果を説明。「地域活性化協働プログラムは、地域において持続可能で自立的な体制構築を前提としていることから、支援期間は1年間に限定している。このプログラムを通じて、地域でITを学び、利活用できる人材の育成や地域産業振興につながるITベンチャー企業の育成に取り組んでいる。2009年は人口減少/少子高齢化が著しいが、新産業創出に積極的な自治体と連携した」とした。
佐賀県では、シニア支援として、NPOを中心にICT利活用セミナーを実施し、500人を越える参加者を得て、シニア世代のICT利活用の促進や、ICTの使い方を教える講師を約40人育成することに成功。ICT利活用を広げための地盤を構築した。
また、鳥取県ではシニア支援として、初心者向けイベントやリーダー養成講習の開催、ブログの開設などを通じてIT活用を積極化。高知県ではITベンチャー育成支援として、支援対象となった地元ITベンチャー企業が米Microsoftでの研修に参加してビジネス機会の創出に取り組んだり、マイクロソフトからの支援を受けているという信用度向上を背景に優秀な人材を確保できたといった成果があがっているほか、地域のIT利活用の促進として、IT利活用講座を開催できる講師を地元有志のNPOとして発足。さらにNPO同士の連携により、県内各地でIT利活用講座が開催できる基盤が整ったという。
こうした成果を背景に、「2010年度は、シニア、障害者、NPO、IT産業における人材育成に積極的で、地域の課題をITを活用して解決することに意欲的な自治体。また、民間との連携によって変革を加速しようとしている自治体との連携を計画している」として、2010年度には、現時点で、3つの自治体と地域活性化協働プログラムにおける提携を発表する計画を明らかにした。
「現時点では明らかにはできないが、来週には首都圏の自治体との提携を発表できる。2009年度は4つの自治体を対象に地域活性化協働プログラムを実施しており、これが2010年度は3つの自治体となっているが、予算規模は縮小していない。持続可能で自立的な体制が構築できる自治体や、地域でITを利活用促進を行うNPOが地域に存在することなど、新産業創出に積極的な自治体と連携することを目的としており、無理に4つの自治体とは連携しなかった。もし、対象となる自治体があれば、もうひとつ増やして、年間4つの自治体と連携することもありうる」とした。
一方、大井川執行役常務は、「自治体ではコストカットに対する要求が高いが、単品のコストカットに目が向きがちである。10年以上稼働し、セキュリティ面でも不安がある古いシステムに対して、依然として大規模なIT予算を使っているというのが現状。コストカットの対象が間違っているのではという感じがする。だが、その一方で、官公庁では顧客管理システムをケースマネジメントや税管理などに活用するといった動きが出ている。マイクロソフトとしても、住民ニーズを把握して、行政サービスを向上するための提案をプロアクティブに行っていく必要があると考えており、また、ITを活用することで、縦割りの体制を打破した住民サービスが可能になる提案をしていきたい」などとした。
2010年度におけるマイクロソフトの自治体向けビジネスは、前年実績を上回る形で推移しているが、大幅な成長率ではないとしている。