売上拡大のための好材料が見られない日本企業

2009年10~12月の連結業績が各社から発表された。その内容を見てみると、日米企業で明確な差が表れたと言っていいだろう。

日本の電機大手9社(日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝、富士通、NEC、三菱電機、シャープ、三洋電機)が発表した2009年度第3四半期(10~12月)連結業績は、前年同期に比べて、売上高では3社が減益となったほか、3社がほぼ前年並みという状況。明確な形で前年実績を上回った企業は3社にとどまった。

また、営業損益では、NEC以外が黒字となったが、前年同期比で減益となった企業が6社と厳しい状況となり、また、最終損益では3社が赤字で、ソニー以外のすべてが減益という状況になっている。

各社が取り組んでいる構造改革の成果は前倒しで進展するなど、利益確保に向けた取り組みは着実に進んでいるが、売上拡大に向けた成長領域としては、エコポイント制度が追い風となった薄型テレビ以外、あまり明るい材料が見られない。

Windows 7が発売となったPCについても、富士通、東芝などが前年割れとなり、通期見通しを下方修正する事態に陥っているほどだ。

新聞各紙はリーマンショック以降に比べて、営業利益の総額が増加していることや、3社が通期の業績見通しを上方修正したことなどをとらえて、回復基調にあることを示しているが、実態は手放しで評価できる段階ではない。2009年度通期業績予想は6社が最終赤字のままという点からも、それは裏付けられよう。

不況を脱し成長フェーズにステップアップした米国企業

一方、海外のITベンダーの業績は、世界的な経済不況からの脱却を予感させるものとなった。特にIT業界の先行指標とも位置づけられるIntelは、2009年第4四半期(10~12月)決算で、売上高が28%増の106億ドル、営業利益が62%増の25億ドル、純利益が875%増の23億ドルと、大幅な増収増益を記録。

なかでも、粗利益率が対前年同期比12ポイント上昇し、65%にも達したことは、辣腕経営者といわれたアンディ・グローブ氏のCEO時代にも成しえなかったインテル始まって以来の記録的なものとなった。

2010年通期の粗利益率も61%±3ポイントと予測しており、年間を通じてこの勢いが継続すると見ている。

また、Windows 7効果があったMicrosoftは10~12月決算で、売上高が前年同期比14%増の190億円、純利益が60%増の66億ドルとなり、売上高、純利益ともに過去最高を記録。対抗するAppleも、売上高が前年同期比32%増の156億ドル、純利益が50%増の33億ドルとなり、やはり過去最高の売上高と純利益を達成している。

韓国のサムスン電子は10~12月の決算で、売上高が前年同期比9%増の39兆2,400億ウォン、営業利益が13%減の3兆7,000億ウォンと増収減益だが、2009年通期(1月~12月)の連結売上高は前年比15%増の139兆2,900億ウォン、営業利益は91%増の10兆9,200億ウォンと大幅な伸びを見せている。

今後、日本企業が世界経済に追いつくには?

このように、日本と海外の企業ではっきりと明暗が分かれたのが、今回の決算だったと言えよう。そして、それは日本での経済環境の回復が、世界に比べて遅れているということを如実に示すことになったとも言える。

拠点の統廃合や人員削減、原価低減活動など、構造改革の総仕上げに力を注ぐ日本の企業に対して、海外の企業は成長戦略へとギアを入れ替えている段階にあるのは、今回の決算数値を見ても明らかだ。このままでは、2010年にその差がさらに開く可能性が高い。

日本の企業は円高局面が続いていることから、為替の点で不利という状況が続いているうえ、米国や韓国の海外勢に比べて、成長著しい新興国における取り組みで出遅れている点も見逃せないだろう。

日本の企業にとって、自社の成長を新興国の成長にどれだけ結び付かせことができるかが、今後の課題だ。これから日本の企業がどの段階で成長戦略にギアを入れ替えることができるか、注目、残された時間はそれほど多くはない。