2月7日(米国時間)に米アメリカンフットボールリーグNFLのプレイオフ最終戦スーパーボウルが開催された。全米が注目するアメフトの頂点を決める試合であり、同時にテレビ中継の1秒あたりのCM価格が世界でもっとも高いイベントとしても知られる。今年は景気低迷やネットマーケティングへの移行などの影響で、スポンサーの顔ぶれが大きく変わった。そのような中、GoogleがスーパーボウルCMに参入して話題になった。

Googleが提供したのは「Parisian Love」という、すでにYouTubeで公開済みの動画だ。パリに留学した学生が現地でフランス人の女性と知り合い、文化の違いに四苦八苦しながらもつきあい始め、ついには結婚するまでのストーリーを検索ボックスだけで表現している。


Googleは雑誌やテレビなどの媒体を使ったマーケティングには消極的な企業であり、検索に関してはこれまでテレビCMを提供したことすらなかった。それもそのはずでテレビCMを積極的に展開すれば、同社の屋台骨であるオンライン広告の効果が疑われかねない。そのGoogleが30秒で250万ドル超とも言われるスーパーボウルCMに乗り出したのだから、直前のEric Schmidt氏(Google CEO)のツィートにある通り「ありえないこと」である。

スーパーボウルCM提供について同氏は「製品やユーザーに関して短編のオンライン動画シリーズを作成し、そして交流の場を示すのが、われわれのマーケティングである。だが、この動画(Parisian Love)は社内、そしてYouTubeでも非常に高く評価されており、より多くの視聴者に提供することを決めた」と説明している。

Googleの決断に対する反応は賛否両論である。ただしYouTubeにおいて「Parisian Love」は8日(同)時点で200万ビューに達しており、スーパーボウルCMの効果はYouTubeにも波及している。

成功企業はスーパーボウルで披露して、ネットで話題に

以前はわずか30秒に数百万ドルを投じるスーパーボウルCMの費用対効果が疑問視されたが、数年前からスーパーボウルで放映されたCMが直後にネット上でも公開されるようになった。今年もGoogleがAdBlitz、HuluがAdZoneを用意して視聴者投票を受け付けている。スーパーボウルCMに限って言えば、テレビCMでありながら、そのままネットマーケティングとしても機能し始めている。

そのためスーパーボウルの視聴者よりも、むしろネットでの口コミ効果を狙ったCMを提供するスポンサーが増えている。たとえばDockersは、下着だけの男たちが「オレはパンツを履いてない~」と歌いながら草原を歩く奇妙な映像を流し、最後にパンツをプレゼントするURLを表示した。このCM自体のビュー数は少ないが、無料パンツが呼び水となってGoogleでのDockersの検索数が跳ね上がっている。

ニワトリが悲鳴を上げまくるDenny'sのCMも同じ戦法だ。同社は2月9日にGrand Slamという朝食セットを無料提供する。その日に鶏卵が大量消費されるからニワトリが悲鳴を上げているのだ。"無料朝食"がネットを駆け巡り、Denny'sも店舗を調べる検索が急増している。


視聴者投票はまだ継続中だが、最後に今年注目されているスーパーボウルCMを何本か紹介しよう。

これまでで最もビュー数を稼いでいるのは、ミーガン・フォックスを起用したMotorolaのCM。バスルームから写真を送信したら、あっという間に色々な場所でトラブルが起こる。"バスルーム"というのがポイント。MOTOBLURのソーシャルネットワーキング力をアピールしている。


現在Huluでもっとも評価が高いのは、Doritosの「House Rules」。母親が連れてきた彼氏に、子供が「ママとボクのDoritosには手を触れるな」とハウスルールをたたき込む。


2位はSnickersの「You're not you when you're hungry」。草アメフト中にお腹がすいて老人のようにしか動けない若者をベティ・ホワイトが演じて話題になっている。しかも本人に向かって「まるでベティ・ホワイトがプレイしているみたいじゃないか」と悪態をつく徹底ぶり……。