Twitterでの対話が、リアルの対話へ
インターネット専業の生命保険会社であるライフネット生命保険は、「安い保険料を実現する」という企業理念のために大々的な宣伝広告は行なっていない。インターネットの情報伝達力、クチコミの力によって、2008年5月の営業開始から現在まで着実に契約件数を伸ばしている。同社のWebサイトには、商品の紹介や保険料シミュレーションなどのほか、顧客からの要望に対する取り組み状況や、ただの日記にとどまらず読み物として質の高いブログなど、多くの情報を発信する取り組みが見られる。
出口治明 ライフネット生命保険 代表取締役社長。戦後初の独立系生保ベンチャーを立ち上げ、創業時の年齢から"還暦ベンチャー社長"とも呼ばれる。新たなものを吸収し続ける出口社長は現在、Twitterを活用してネットユーザーとの対話を楽しんでいる。そのTwitter観とは? |
その一方で、社長の出口治明氏は「Twitter」を活用し、日々の出来事から会社の業績まで、様々な事柄を"個人"の視点で投稿し、多くのフォロワーに親しまれている(アカウントはこちら)。リプライのやりとりも活発だ。一人のTwitterユーザーとして、また業界に新しいスタイルをもたらした生命保険会社の社長として、Twitterをどのような存在と捉えているのだろうか。話を伺った。
Twitterと"還暦ベンチャー"社長
──Twitterを始めたきっかけを教えてください
出口 社内の若いスタッフに「面白いからやってみてください」と勧められたことがきっかけです。やってみると面白いんですね。
──面白いと思われたのは、どんなところでしょうか
出口 京都で講演を行なったときに(アルコールが入っていたこともあって)ちょっとスタッフの悪口を言ったんです。それで翌朝会社に行ったら、そのスタッフが「出口さん、昨日京都でボクの悪口言ってましたよね」と言うんですよ。「なんで知ってるの?」と聞いたら、その講演がTwitterで中継されていたんですね。
私はその時よくわからなくて……。講演中も会場で若い人がずっとパソコンを使っていたのを見て、「話が面白くないのだろうな」と思っていたんですよ。でも、実はTwitterで中継してくれていたんですね。それがTwitterを始めたばかりのときの出来事で、「すごく面白い」と思った最初でしたね。
──フォロワーの方へのリプライ(リツイート)も頻繁に行っていらっしゃいますね
出口 「会社の契約数が伸びてうれしい」と書くとすぐに「私も入ろうかな」という反応があったり、私もそれに「ぜひ入ってください」と返すなど、反応が本当に早いんです。「どこで保険の相談をしたらいいか分からない」という方に「ライフネットへ来てください」と伝えたら「ホントに行っていいんですか」と返事をいただき、実際に会社へ来られてその場でご契約いただいたこともありました。
保険契約者の皆様には、ブログを書いたりメルマガを送ったり、お客様の集いとしてオフ会を開催するなど、いつもお客さまの声を聞き続けようとしているのですが、Twitterではライフネットのお客さまかどうかを問わずにいろいろな方と話ができます。
──Twitter上のやりとりが、直接の出会いにつながることもあるのですね
出口 ボクはできるだけ生の声を聞きたいので、さまざまな所でさまざまな人と話をしています。今度、札幌へ講演に行くのですが、それはTwitterで知り合った方が「自分が集めますから来てください」と仰ってセッティングしてくれたものなんです。実は、その方にはまだお会いしたこともないんです。
──フォロワーも多いですが、フォローしていらっしゃるアカウントも多いですね
出口 基本的に、フォローしていただいた方はフォロー返しをしています。フォローしない場合もルールを設けていますね。つぶやきを非公開にしている人や、自分からはつぶやくことはしないで読むだけだと思われる人、それと明らかにスパムだと思われるものはフォローしないようにしています。
──TL(タイムライン)には目を通していらっしゃいますか
出口 いつもすごく忙しいので、ミーティングの合間など5~10分の空き時間などで読めるものを読み、その時に書き込むというパターンです。全部読む時間はないですね。クライアントツールは使わずに、会社のパソコンから利用しています。
"個人のもの"と割り切り、面白さを活かして使う
──今後、会社としてTwitterを活用していくというお考えはありますか
出口 会社の中でコンプライアンスの問題などを考えたときに、Twitterは個人のものと割り切りました。保険会社は免許事業ですから、オフィシャルでやるとなるとコンプライアンスのチェックが必要になりますよね。
私はブログも書いていますが、これは会社のWebサイトの中にある以上、保険業法のコントロールを受けるため、そんなに面白いことは書けないんですね。(表現に制約のある中で)正確に書かないとなりませんから。
──個人的にアカウントを持っている社員の方もいらっしゃいますよね
出口 何人か、個人で使っている人もいるようですが、全社員に強制するようなことは言っていません。基本的には個人のTwitterは個人のもの。会社のアカウントもありますが、それはオフィシャルで会社のもの。会社でやることについては、コンプライアンスオフィサーに相談してきちんと峻別をしています。(同社のオフィシャルTwitterアカウントでは、同社Webサイトの更新情報などを流している)
──Twitter以外にもネットを使ったユーザーさんとの交流は模索できると思いますが、今のところTwitterがベターだと思いますか
出口 Twitterが一番かどうかはわかりません。ただ、Twitterの面白いところは「早い」というところですね。共時性といいますか、ユーザーの方と一体感を持つという面では一番良いのではないでしょうか。まだまだ発展途上の媒体であるとは思いますが。
* * *
世にベンチャー企業は数多あるが、歴史ある業界に全く新しい風を吹き込んだベンチャー社長と言われると、濃く熱く押しの強い人物を想像してしまうのではないだろうか。しかし、出口社長はひたむきに良いサービスを提供することに心を傾ける、人当たり柔らかな方だった。「Twitterは個人のもの」と割り切っているからこそ、そのツイートには社長ご本人の人柄を見ることができるのだ。
Twitterで身近になるライフネット生命
ネットユーザーと交流し、リアルの対話につなげたいというライフネット生命保険 出口治明社長。子育て世代にやさしい同社商品にも、還暦ベンチャー社長の動向にも興味あり、という方はぜひ、出口氏のTwitterアカウントをフォローしてみてください。聞きたいことがあれば気軽に質問を!
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