シマンテックは2月5日、2009年の事業統括と2010年の事業方針に関する記者説明会を開催した。説明会には同社の代表取締役社長を務める加賀山進氏が、製品ポートフォリオ・販売体制・パートナー支援・製品サポート体制の強化について話した。
同氏はまず、「最近、ソフトウェアベンダーがハードウェアを扱うようになるなど、ビジネスの対象を広げるベンダーが増えているが、当社は違う。狭い世界でビジネスを行っており、やらないことを宣言している。その戦略を理解しておいていただきたい」と、同社の基本的なストラテジーについて説明した。
同社は事業戦略として、「コンシューマとエンタープライズの双方のセキュリティ市場でトップの地位を維持していく」「バックアップ/リカバリ分野におけるリーダーシップを強固なものにする」「SaaSビジネスを拡大する」「顧客らのインフラをコモディティ化しコスト削減を実現する」という4つの優先分野を設定しているという。
この4つの分野に基づいて、製品のポートフォリオも強化される。例えば、今月にはバックアップ/リカバリ分野の新製品「NetBackup 7」と「Backup Exec 2010」がリリースされた。両製品は、同社が買収した企業の機能である「アーカイビング」と「重複排除」が統合されている。同氏は、今後も買収した企業の製品の統合を進めていくと語った。
販売体制の強化策としては、グローバルレベルの提携を増やすとともに、企業向けセールスを拡大するために産業別・ソリューション別・地域別など、きめ細かな販売体制を構築していく。
パートナーの支援を強化する施策としては、パートナープログラムの促進が挙げられた。「昨年からSMBに特化したパートナープログラムをスタートした。これが非常に好調で、昨年までに22社の企業が集まり、3月末までに当初の50社の目標を突破しそうだ。そこで、目標値を上げて、今年4月から1年にかけて100社集めることを目指す。また、DLPに特化したパートナープログラムも次に行う予定だ」と、同氏は説明した。
また同社は、品質向上に向けて、エンジニアリング体制の大幅強化も図っている。1つは、日本オフィスにいる6つの職種に分かれる250人のエンジニアを束ね、そのうち5%をジョブローテーションしていることがある。同氏によると、外資系ベンダーでは給与体系の違いなどから入社時の職種が変わることはなく、非常に珍しい例だという。
もう1つのエンジニアリング体制としては、日本単独の機能を開発する組織「JDC(Japan Developers Center)」と技術検証やパッチ作成などを行う組織「JEC(Japan Engineering Center)」がある。JDCはこれから渋谷に設立される予定だ。「当社の製品の90%はワールドワイドで開発されているが、残り10%は日本の顧客のニーズにこたえたもの。その開発をJDCで行う」と同氏。
同氏によると、日本企業の要求のレベルは高いため、ローカルでの対応が必須だが、こうした要求が同社の製品のクオリティ向上に大きく役立っているという。同氏は「当社の製品から"安心"という要素を取っ払うと、使い物にならなくなる。だからこそ、当社はエンジニアリングへの投資を惜しまない」と語った。