「財務諸表と共に"CO2排出量"を提出しなければならない日がきてもおかしくない」と語るSAPジャパン バイスプレジデント インダストリー戦略本部 兼 バリューエンジニアリング本部 本部長 脇阪順雄氏

SAPジャパンは2月3日、企業のサステナビリティ戦略の展開や実行を支援する「SAP BusinessObjects Sustainability Performance Management」の国内展開を発表、同日より提供を開始した。同社 バイスプレジデント インダストリー戦略本部 兼 バリューエンジニアリング本部 本部長 脇阪順雄氏は「SAPのサステナビリティ戦略は大きく2つある。SAP自身がサステナビリティ実践企業の規範となること、そしてSAPの製品でもって顧客企業のサステナビリティを支援し、サステナビリティ市場を牽引すること - 今回の新製品でもって、日本企業のサステナビリティ実績の向上に寄与したい」と語る。

サステナビリティ(sustainability)とは、企業の事業継続性を指す言葉で、CO2削減や省電力、マイノリティの採用、貧困地域への援助などを含む。こういった活動に企業としてどの程度取り組んできたか、その目標値と実績を具体的な数値で公開し、評価を受けるケースが欧米を中心として増えてきており、もはや、企業の自主的な行為ではなく責務として見なされている傾向が強い。また、サステナビリティは単に社会に対して慈善を行うことが求められているのではなく、その行為が将来的に"収益に結びつく"ものでなくてはならないことから、サステナビリティ戦略は投資家からの資金調達にも影響する課題となりつつあある。

SAPが唱えるサステナビリティマップ。単なるCSRとはすでに異なる企業課題になっている

一方で、日本企業は「(環境対策や省電力などに対する)パフォーマンスは非常に素晴らしいが、文化的土壌のせいか、それらを数値化して積極的に公開するという行為を避ける傾向にある」(脇阪氏)ため、サステナビリティ戦略を重視するグローバルの潮流から取り残されてしまう危惧すらある。だが、サステナビリティに関する具体的なパフォーマンス指標評価(KPI)も一般的ではなく、また企業内の複数のシステムに散在するデータを収集するには莫大なコストと時間がかかることから、日本市場では現実的なサステナビリティソリューションの選択肢が少なかったことも事実だ。

SAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発本部 GRCグループマネージャー 中田淳氏

SAP BusinessObjects Sustainability Performance Managementは、サステナビリティの国際的ガイドライン「GRI(Global Reporting Initiative)」による初の認定ツール。CO2排出量や水の使用量など、100を超える項目についてKPIライブラリを提供し、開示データの信頼性を担保する(KPIの追加/変更も可能)。また、PDCAに基づいてサステナビリティ戦略を計画→実行→分析できるよう、それぞれのプロセスの可視化およびプロセス間のリンクが図られており、各戦略を実行することでどれくらいのコストダウン(リターン)が得られるかといったレポーティング機能も実装している。最もコストが生じるデータ収集についても、「SAP NetWeaver上で動くので、SAP ERPからの自動データ収集はもちろん、非SAPシステムからもWebサービス経由でサステナビリティデータを収集できる。また、リクエストフォームやアンケートフォームを使って、システム化されていない"人"からのデータの収集も可能」(SAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発本部 GRCグループマネージャー 中田淳氏)という。

戦略マップ。実際にはインタフェースは日本語で提供される。「現場と管理サイドのコミュニケーションを一元化し、サステナビリティ戦略における目標と実績を共有できるように」(中田氏)あらゆるプロセスが可視化されている

戦略マップの目標に対してKPIを設定し、目標と活動をリンクさせる。目標未達の活動の特定やモニタリングも容易で、監査証跡の記録も行える

ERP上にはない、個人からのデータ収集もWebサービスを使ったアンケートフォームやリクエストフォームから行うことができる

脇阪氏は「サステナビリティは、現場の積み上げで解決する課題ではなく、トップダウンによる意思決定が非常に重要。したがってSAPジャパンとしては本製品を"トップが積極的にサステナビリティにコミットしている企業"を中心に、3年で40社の導入を目指していきたい。顧客がこの製品でCO2削減などを実現できれば、それがSAPのサステナビリティパフォーマンス向上にもつながる」としている。

なお、SAP自身、同ソリューションを使用してサステナビリティ戦略を実践しており、同社の取り組みはSAPサステナビリティレポートから閲覧することができる。2008年度のGRI評価は「B+」だが、「2009年度はA+を目指している」という。現在、同社はCO2排出量を2020年までに「2000年のレベルにまで引き下げる」という目標を立てており、2009年は2008年の排出量から16%減を達成している。