中国での情報統制と撤退問題が話題となるGoogleだが、実はいま同社にとって最も頭痛の種はヨーロッパかもしれない。欧州各国はGoogleのシェア拡大に危機感を抱いており、その影響力を抑え込もうと、プライバシー保護と著作権問題の観点から、さまざまな規制を模索していると言われる。イタリアでは、YouTubeなど動画投稿サイトに対してTV局と同様の法的責任を負わせ、免許制へと移行する法案が可決されようとしている。
米Wall Street Journalの2月3日付けの記事「Italy Plans to Extend TV Rules to Web Videos」によれば、イタリア政府はTVなど放送局に適用している法律の適用範囲を、YouTubeなどのインターネット上の動画サイトにまで広げるよう模索しているという。法案は早ければ今月内にも成立するとみられ、もし施行された場合、イタリア国内での動画配信は免許制となり、TV放送に準じた各種責任やルールが課されるほか、著作権動画の運用に関して厳しいルールが適用されることになる。こうしたルールの適用は、急成長中のネットサービスにとって大きな打撃となる可能性がある。
この背景についての解説はNew York Timesの「In Europe, Challenges for Google」という記事が詳しい。現イタリア首相のシルヴィオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)氏はメディア王として知られる人物で、傘下のMediaset SpAを母体に同国メディアの7割の実権を握っているとされる。政治の世界への進出もこのメディア支配力と圧倒的な資金力を背景に実現したものだ。著作権問題についてはGoogleはMediasetからの訴訟も抱え込んでおり、今回の法案はベルルスコーニ氏によって推進され、こうした新興勢力排除が狙いにあるという話がささやかれている。
Googleにとって頭が痛いのは、欧州市場を簡単に捨てられない点だ。例えば売上だけをみても、英国だけで現在の中国市場の売上の10倍ほどあり、今後の成長性という点を差し引いても、中国市場と違って無視できるレベルではないからだ。同様の問題はドイツなどでも提起されており、欧州各国は前述の個人プライバシーと著作権問題を盾に、法律で武装する形でGoogleへの圧力を強めている。