経済産業省は2月2日、諸外国と比べ国際受注で遅れを取っている国内宇宙産業企業の国際市場の開拓および巻き返しを図るため、IHIエアロスペースの代表取締役社長である石井潔氏を団長としたミッション団が2月7日から12日にかけて、エジプトおよび南アフリカを訪問することを明らかにした。
宇宙産業の裾野は広く、国内の市場規模は約7兆円と見られるほか、太陽電池や燃料電池などの技術の波及効果も期待されている。しかし、日本の宇宙機器産業(人工衛星など)の売り上げの9割は官需で、欧米の約6割(残り4割が民需)というバランスに比べて偏りが大きく、また国内の衛星メーカーであっても、国内のCS放送衛星などの受注ができていないのが現状。宇宙機器の市場規模も、日本は2600億円なのに対し、米国が3.8兆円、欧州が8700億円と大きく差が生じている。
一方、人工衛星の活用は近年、通信・放送や地球観測分野を中心に発展途上国でも進められており、打ち上げられる衛星は全世界で1999年から2008年まで128機だったものが2009年から2018年の間に260機程度まで拡大することが見込まれている。
こうした現状を踏まえ、衛星技術を保有する各国が発展途上国などへの売り込みを積極的に行っており、中国は衛星の提供を見返りにナイジェリアなどから資源を獲得することに成功しているほか、フランスも大統領自らのトップセールスの展開などの施策によりベトナムなどから衛星を受注することに成功している。
また、アフリカでも宇宙利用の需要は拡大しており、衛星単体で数十~百億円、地上の利用システムまで含まればより大きな市場拡大が見込まれるが、日本はこれまでデータ利用レベルの技術協力にとどまっており、衛星受注などの大型商談には至っていない。
こうした動向を経産省では、国内宇宙機器産業は国際競争力が乏しく、宇宙利用サービスを支える衛星システムはほぼすべて海外製であり、結果として宇宙利用が拡大しても、産業のバリューチェーンとして、宇宙機器産業と宇宙利用サービス産業の間で事実上分断されていると分析をするに至った。実際、日本は世界で4番目に自国ロケットによる衛星打ち上げを実現したが、2009年1月に韓国の衛星打ち上げを受注するまで事実上、商業打ち上げの実績はなかった。
今回の訪問では、政府が宇宙産業の振興を掲げた「宇宙基本法」の成立後、初めてのミッション派遣となり、現地で、日本企業が参入できるように、将来の協力関係や衛星ビジネスの可能性などについて政府機関や民間企業との話し合いを行う予定となっている。
なお、経産省では、将来的に売れる技術や実利用につながる衛星情報システムの開発が不可欠とし、小型衛星システムで先端の商用衛星並みの性能を低コスト、短納期(開発期間3年)で実現する高性能小型衛星「SASKE」の研究開発プロジェクト「ASNARO」を推進しており、打ち上げのみならず、地上局やデータ利用などまで組み合わせたトータルシステムとして競争力を高めていく方針を打ち出している。