日立製作所は2月2日、記録密度を1平方インチあたり2.5TビットのHDDを実現することが可能となる記録ヘッドの基本技術を開発したことを発表した。
今回開発された技術は、記録媒体の微小領域に光を当て、熱を加えることで、局所的に磁化を反転しやすくし、磁気データを記録する「熱アシスト磁気記録方式」に対応したヘッド技術。新たに、直径20nm以下の光スポットを生成できる光素子と、これを磁気ヘッドの先端部に一体成形する技術を開発、シミュレーションにより、これらの技術を用いて作製した記録ヘッドにおいて、1平方インチあたり2.5Tビット相当の磁気記録を安定して行えることを確認した。
具体的には、Auで形成されたナノピークと呼ばれる三角形状の微小金属片にレーザ光を照射することにより、Auの表面において光の電場と金属中の自由電子が共鳴結合し、三角形の頂点位置に近接場光を発生される。今回試作した近接場光素子は、先端部分の曲率半径が10nm以下の構造で、直径20nm以下の極微小の近接場光スポットを形成することが可能だ。
また、熱アシスト記録の実現には、近接場光発生素子に光を照射しつつ、近接場光発生領域に十分に強い記録磁界を印加することが必要で、今回の試作では、磁気記録ヘッドの先端部の極近傍(20nm以下)に近接場光発生素子の先端部分を精度よく形成する製造方法を採用した。同製造方法は、現行の磁気ヘッド製造プロセスからの変更がほとんどなく活用できるため、新記録技術導入に伴うヘッドの製造コスト上昇を抑制することが可能となる。
同社では、開発した近接場光素子の形状と大きさをもとに、発生する近接場光の形状や強度を実時間電磁界解析法を用いて予測、近接場光エネルギーによる記録媒体の温度上昇を解析したほか、マイクロマグネティクスに基づいた数値計算に、記録媒体の温度上昇による磁気特性の変化の影響を組み入れることで、媒体上に記録できる信号や雑音情報を予測、解析することに成功した。その結果、同開発の記録ヘッドを適切な媒体と組み合わせた場合、1平方インチあたり2.5テラビットの記録密度に相当するトラック幅約28nmビット、長さ約9nmの記録を安定して形成できることを確認したという。
なお、同成果の詳細については、2010年1月18日から22日まで米国ワシントンDCで開催された磁気記録に関する国際学会「11th Joint MMM-Intermag Conference」にて発表された。