リコーが開催する「RICOH&SUN Java Challenge 2009」の最終選考会が1月15日、都内にて開催された。同コンテストは、プログラミング技術を競うことで、技術力向上と人材育成を目的に開催されるもので、欧州では2004年より開催されており、優勝者にはJavaOneにてデモンストレーションを行う権利が与えられており、その様子はSun MicrosystemsのWebサイト上でも見ることが可能だ。日本での開催は2008年の第1回目に続き、今回が2回目の開催となる。
ルールは、JVM(Java Virtual Machine)を搭載したリコーのマルチファンクションプリンタ(MFP)上で、組み込みJavaプログラミングによる「ビジネスアプリケーション」を自由に開発し、その成果を競うというもの。参加資格は国内大学の学生と指導教官となっており、参加学年の制限などはない。
実施期間は、4~6月にコンテスト参加の募集を実施、7~9月の間にプログラムを開発し、10月の1次選考を経て、年内の残りの期間をMFP上での実際のプログラムに充て、翌年の1月に最終選考が行われるという流れ。
今回は26チームの応募があり、その中の8チームが1次選考を通過、最終選考へと駒を進めていた。
最終選考に残った8チームとシステム名は以下のとおり。
大学名 | チーム名 | システム名 |
---|---|---|
広島市立大学 | 大福村チーム | らくらく画像配置 |
法政大学大学院 | ギリギリマスターズ | のこすんです |
鹿児島大学 | チームアスタリスク | Document Share |
神奈川工科大学 | smile | 情報共有及び情報操作ツール「情報君」 |
筑波大学 | ORI3 | ETB(Empty Time Browser) |
北海道情報大学 | えべチュン飼育係システム班 | twimagio(とぅいまじお) |
電気通信大学 | Project-D2 | Project-D2 |
神奈川工科大学 | team melonpan | お昼ごはん提案システム |
最終選考では1チームに15分のプレゼンテーション時間が与えられ、その時間内で自分達が製作したシステムの趣旨、使い方、結果などの説明を行うほか、筑波大学大学院システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻の北川博之教授を委員長とする8名の審査員からの質問なども受ける。
各システムとも、MFPの持つさまざまな機能と組み合わせたシステムを考案、プレゼンを行うわけだが、中にはデモンストレーションが上手く動かず、悪戦苦闘するチームなどもあり、単なるソフトウェアを開発するだけでは分からない実際の機器を対象とした開発の難しさを身をもって体験したチームなども見受けられた。
今回用意された賞は、グランプリ、準グランプリのほか、主催者であるリコーから贈られるリコー賞、協賛企業であるサン・マイクロシステムズから贈られる特別賞「サン・マイクロシステムズ賞」の4つ。
(右から)グランプリ、準グランプリ、サン・マイクロシステムズ賞、リコー賞となっており、各賞にはそれぞれ賞品などが送られる(右の画像はグランプリの商品券とリコー製のデジタルカメラが賞品として後ろに置かれた状態) |
サン・マイクロシステムズ賞には、鹿児島大学チームアスタリスクのシステム「Document Share」が獲得した。同システムを簡単に説明すると、インターネット上のオンラインファイルストレージサービスをMFPを結びつけるシステムで、MFPからサービスにアクセスし、ファイルを直接印刷したり、逆にスキャナから読み込んだ文書をそのままアップロードすることが可能となっている。
リコー賞は電気通信大学Project-D2のシステム「Project-D2」が獲得した。同システムを簡単に説明すると、MFP本体ではなく、入出力の紙に注目。紙にスタンプを押したような状態での印刷を指定してやることで、個人情報部分を読めなくすることが可能となっており、複数枚指定や両面印刷といったMFPの機能を活用することも可能だ。
そして、準グランプリには、神奈川工科大学team melonpanのシステム「お昼ごはん提案システム」が、グランプリには北海道情報大学えべチュン飼育係システム班のシステム「twimagio」がそれぞれ選ばれた。それぞれのシステムを簡単に説明すると、お昼ごはん提案システムは一週間の昼食をマークシートでMFPに登録させることでカロリーや栄養の偏りを算出、利用者別に異なる飲食店でのメニューを提示するほか、印刷された紙には広告やセール情報、メニューの宣伝などを掲載することが可能となっている。
一方のtwimagioは、TwitterとリコーのMFP「imagio」を掛け合わせた造語。書類や絵をスキャンし、画像と一緒につぶやくことが可能な「ScanTweet」、twimagio Botに対してつぶやかれた画像の印刷を行う「TweetPrint」、スキャンした画像でTwitter会議を実現する「TwimagioKaigi」の3つの機能が用意されている。
北海道情報大学えべチュン飼育係システム班は、前年の第1回大会もグランプロを獲得しており、これで2連覇を達成したこととなる。
審査基準はコンセプトやデザイン、プレゼンスキルなどを審査する「マーケティング」と、UMLの記述やオブジェクト指向のレベル、Javaのコーディングなどを審査する「技術」の2つの視点から行われており、今回のグランプリ受賞結果について、審査委員長の北川氏は「大きく分けると、画像処理の本流を意識したチーム、世の中のコミュニケーション支援などと連携を意識したチーム、そして健康系を意識したチームの3つに分けられた。これにより前回よりも多様化が進んでいることが明らかにされたほか、プレゼンテーション自体も説得力があるものが多々あり、なかなか甲乙付けがたいものがあった」と評した。
実際、実用的と思われるサービスの提案を行ったチームに対しては、具体的に機能の詳細などを審査員などが文字通り、食いつくように聞いていたのが印象的であった。
なお、リコーでは、2010年も同様のコンテストを開催する予定としており、3月中にはその概要を発表、募集を開始するとするほか、近い将来には北米選手権なども実施し、世界選手権まで規模を拡大したいとしている。