日本アイ・ビー・エムは1月14日、クラウドコンピューティング事業に関する記者説明会を開催した。同社は1月1日付けで社長直属のクラウド統括組織を設立するとともに、新たにクラウドの最高技術責任者(CTO:Chief Technical Officer)を任命し、クラウドビジネスを推進するチームを結成するなど、積極的にクラウドビジネスを進めていく構えだ。
クラウド・コンピューティング事業を統括する執行役員の吉崎敏文氏は、企業向けクラウドにおける同社の強みとして、「技術面でのリーダーシップ」、「ソリューション・ポートフォリオ」、「豊富なクラウド導入実績」、「グローバルにわたる英知とスケールメリット」の4点を挙げた。
同氏はこれらのうち、技術面でのリーダーシップが最大の強みだと述べた。「クラウドコンピューティングは、仮想化・標準化・自動化といった基盤技術に支えられている。当社は仮想化において40年の実績があり、また、自動化については90年代初めからオートノミック・コンピューティングとして取り組んできた。この2つの技術は当社の強み。クラウドは新たなトレンドではあるが、基本的な技術について熟知している必要がある」
また同社では社内の数十の業務を分析して、クラウドに向く業務を"スイートスポット"として特定しており、それらについてクラウド・ソリューションを提供していくという。同社がスイートスポットと見なしているのは「コラボレーション」、「BI」、「アーカイブ」、「アプリケーションのテスト」など。
すでに同社は企業向けクラウド関連の製品やサービスを発表しているが、今年はパブリッククラウドに関するサービスが多く提供される予定だ。現時点で発表が明らかなパブリッククラウド向けのサービスは、デスクトップ端末向けの「パブリックデスクトップクラウド」、開発テスト向けの「パブリックテストクラウド」、コンピューティングリソースの「コンピュートクラウド」などである。
同氏は日本IBM独自のクラウド事業の施策として、年初に設けられたクラウド事業のための組織を紹介した。新組織の1つは、同氏が率いる社長直属のクラウド統括組織だ。クラウドへの関心が高い日本の状況を受けて、「世界に先駆けての」設立だという。
また、クラウドのCTOとして、理事を務める山下克司が任命された。同氏は社内と顧客の両面におけるクラウド関連技術のアセスメントに責任を持つ。同氏に加え、グローバルでクラウド関連の技術理事29名の任命も行われた。
3点目として、クラウドのスペシャリスト300名から構成されるチーム「Team Cloud」の結成が紹介された。1月中に同チームのメンバーの任命が行われる。同チームはクラウド製品・技術の開発、マーケティング、セールスを行う。
また同社は3月中に、社員1,000人のクラウド教育を完了する予定であり、クラウドに関する人材育成に今後5年間で100億を投入するという。