イーフロンティアの3DCGツール『Shade』シリーズは、ベジェ曲線とポリゴンメッシュのふたつの方法でモデリングを行なえる、ユーザーフレンドリーなソフトウェアだ。『Shade』が初めて誕生したのは1986年のこと。それから15回のメジャーアップデートを重ね、2009年11月18日に最新バージョンである『Shade 11』が発売された。今回のバージョンも以前と同様に、「Basic」と「Standard」、「Professional」の3つのバージョンが用意されている。
『Shade』は3つのバージョンが発売されている。基本的なエンジンは同じだが、機能が大きく異なる。安価なBasicは3DCG初心者に人気だ |
『Shade』シリーズは、モデリングだけでなく、アニメーション機能も搭載した3DCGツールのオールインワンパッケージだ |
Shade 11の開発コンセプトは、「初めてのユーザーに易しく、使い込んだユーザーには高度な表現と便利さを」というもの。初心者から上級者まで使える新機能が、本製品には多数追加されているが、主なものを以下にまとめてみた。
●ボリュームライト(Standard/Professional)
光源からの光跡を描ける機能。ホコリが舞う部屋や、深い霧に覆われた沼地などを容易に表現できるようになった。
●スケッチモデラー(Basic/Standard/Professional)
2次元に描いたイラストから、3DCGを作成する機能。線画をトレースしていくだけで、立体形状化できる。
●フォトモデラー(Basic/Standard/Professional)
異なる角度から撮影した複数の写真から、テクスチャーつきの立体形状を作成する機能。初心者モデラーにお勧め。
●ケージ(Basic/Standard/Professional)
オブジェクトを直感的に変形する機能。作成した立体形状を、ぐにゃぐにゃと変形させられる。
●Google SketchUp入力(Basic/Standard/Professional)
Google 3Dギャラリーに公開されている3D形状の読み込みに対応。ネット上に公開されている無数のオブジェクトを使用できる。
細かい新機能はこれ以外にもあるが、目立った機能は以上の5つ。今回はひとつ目に挙げた「ボリュームライト」を実際に試してみた。
空気感の表現が簡単にできる「ボリュームライト」
従来の光源(ライト)の場合、何もない空間に配置してもレンダリング結果には、何も表示されなかった。その理由は、光源はオブジェクトに反射して初めて「光」として描かれるからだ。しかし、今回から追加された「ボリュームライト」は、空間内のホコリや塵、水蒸気に反応して、光のスジ(光跡)として描かれる。もちろん、モデリング時にホコリや塵を作る必要はない。Shade 11が擬似的に「空気中にはホコリや塵があるもの」と認識して、自動的に光跡を描いてくれるのだ。パーティクルを使わずに簡単に光跡が描けるので、素早く廃屋や密林などの3DCGを作るときには重宝する機能だ。なお、ボリュームライトはStandard版とProfessional版に搭載されている機能なので、Basic版では利用できない。
「マイコミジャーナル」のロゴを使ってボリュームライトの実験をしてみた |
通常の光源でレンダリング。ロゴの後方から照らされているのはわかるが、空気感は感じられない |
ボリュームライトでレンダリングした結果。美しい光跡が描かれており、ロゴの立体感も増した |
「ボリュームライト」の設定方法はとても簡単。従来と同じように光源を配置したら、「形状情報」のウインドーを開く。すると、最下部に「ボリュームライト属性」と描かれた項目があるので、「ボリュームライト」のチェックボックスをオンにするだけ。たったこれだけで、レンダリング結果に光跡が描かれる。ボリュームライトは、点光源やスポットライト、線光源など、すべての光源に設定可能。複数の光源を配置した場合は、個別にボリュームライトの設定ができる。ボリュームライトの設定項目は、「明るさ」と「半径」、「影を落とす」、「品質」の4つ。ボリュームライトが影響を及ぼす距離は、「半径」の数値で決まる。数値を変更すると作業画面状のアウトラインも変わる。「ボリュームライト」はチェックボックスをクリックするだけの簡単な操作で表現力をアップさせる強力な機能なので、ぜひ試してみてほしい。