2009年も残すところあとわずかとなった。ここで2009年に発表されたニュースやインタビューを振り返って、特にこの1年で印象的だった技術をとりあげて紹介する。もっともインパクトのある発表を続けたのはGoogleだ。それに日本で一気にシェアを広げ生活を変えたiPhoneも注目される。まだ日本でのコンテンツ展開はないが、来年につながりを見せるデバイスとしてKindleも取り上げておきたい。
1. Google Public DNS
GoogleはWebを高速化するという同社の取り組みの一環としてパブリックなDNSサービスを開始した。インターネットに与えた影響としてはもっとも根幹的で関係者を驚愕させた発表だった。すでにその性能は申し分ない。IPアドレスは「8.8.8.8」または「8.8.4.4」ときわめて覚えやすい。今後、DNSの設定は「8.8.8.8」にすればいいという説明も増えるだろう。
しかしこの発表は、インターネットに深く関係している人たちに、インターネットそのものがGoogleの制御下におかれることにつながるという大きな懸念も生み出した。DNSはインターネットを形作る根幹のサービスだ。ただでさえ便利なGoogleのサービスを使うことが増えている今日、DNSまでGoogleのお世話になるというのに、危機感を覚えるというわけだ。
2. Google日本語入力
Googleの日本法人からは日本語入力システム「Google日本語入力」が公開された。Googleの持っている莫大な、インターネットコンテンツそのものともいえるデータから日本語辞書を生成している。このため、既存の日本語入力システムでは提供できない最新の言葉を難なく入力できる。いったいなにを持って「正しい日本語とするのか」という大きな検討課題が解決したわけではないが、すくなくともネットで使われている活きた日本語をストレスなく入力できる。Google Updates経由で自動的に更新されるのだから、理想的といえる状況だ。
Google日本語入力は「日本語」という入力メソッドにとらわれない可能性を秘めている。いわばキーボードから入力された文字に一番最初にふれるソフトウェアということだ。ここでさまざまな機能を提供できる。英語であったとしても、前後の入力データを加味して検索結果に反映できるようにするなど、広大な可能性がある。
3. Google Chrome
Google ChromeはついにPCブラウザ最速の称号を手に入れた。Chromeの開発速度は驚くほど速い。ほかのブラウザが高速化していないわけではなく、ほかのブラウザもそれ相応に高速化が実現されている。それと比べても、Chromeの高速化の方が上回っている。Mac OS X版とLinux版の提供もはじまりマルチプラットフォーム性も手に入れた。
ユーザがFirefoxを手放せない大きな理由がエクステンションだが、Chromeはついにエクステンションも実現した。しかもFirefoxと比べてきわめて簡単に実装できるうえ、再起動の必要もない。高速、簡単、手間いらず、拡張性ありと、既存のブラウザを研究して設計されたブラウザChromeはこれからもユーザベースを増やしつづける理由を持ちつづけている。
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4. Google Chrome OS
Google Chrome OSの全容が明かになった。ネットブックを対象とし、高速起動と高速終了、高いセキュリティと利便性を両立させた専用のオペレーティングシステム。システムはLinuxをベースとし、アプリケーションはChromeを使う。H/Wベンダと提携し、専用のオペレーティングシステムとして提供していく。
Chrome OSを搭載したネットブックは2010年またはそれ以降に登場するようになるとみられる。システムを起動して7秒後には利用でき、しかも販売価格は廉価。Googleアカウントでログインすれば、デスクトップやノートPCと同じGoogleサービスを即座に使えるということになれば、手軽に使えるセカンドマシンとして購入を考えたくもなる。
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5. Google Search
Google事業の要である検索サービスは毎日進化している。どの新機能や改善をピックアップすべきか迷うが、ここでは「リアルタイム検索」「翻訳による検索のユニバーサル化」「音声検索」を取り上げたい。もっとも根本的で強力なのはリアルタイム検索機能が実現されたことだ。Twitterを対象としているが、これは世界の情報へのアクセスのタイムラグがきわめて小さくなることを意味している。Googleがまさにインターネットそのものという形に近づいている。
翻訳技術の向上と、それを検索に織り込んできたことも注目される。日本語のキーワードで日本語以外のコンテンツに対して検索をかけ、結果を日本語に翻訳して表示させるといったことができる。言語の壁を越えて世界中のリソースに簡単に検索をかけられる。
そして音声だ。iPhoneのように仮想キーボードしかない場合、タイピングで入力するよりも音声を使った方が入力がはやい。GoogleがiPhoneおよびAndroid向けに提供したアプリでは音声による検索が可能で、これが実によく機能する。日本語と英語、中国語に対応。非公式ながらも英語の音声を出力するGoogle APIも存在しており、今後音声認識技術や音声での出力をGoogleが提供しているさまざまなサービスで利用してくることが予想される。
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6. Google Apps
Google Appsにとって2009年は転換の年になったかもしれない。米国ロサンゼルス市がGoogle Appsの導入を決定した。3万人規模の導入であり、クラウドでサービスやアプリケーションを提供していくというGoogleにとって競合をはねのけて勝ち取った大きな勝利といえる。この事例はほかの採用検討段階における参考事例として価値のあるものになる。Google Chrome OSやAndroidの普及はGoogle Appsの利用をさらに加速させる要因にもなるとみられる。
7. Google Go & Closure Tools
Googleが発表した新しいプログラミング言語「Go」は多くの開発者の目を引いた。パフォーマンスは既存のコンパイル型言語と比較してまだ優秀だといえるレベルにはないが、整理された言語仕様と、将来はChromeなどで直接利用できるようになるのではないかという期待など、プログラミング言語「Go」はいきなり殿堂入りの登場となった。
GmailなどGoogleが提供しているWebサービスやWebアプリケーションで使われているライブラリと開発ツールがGoogle Closure Toolsとして公開されたのも多くのWebデベロッパの目を引いた。高性能なミニファイ機能やJavaScriptライブラリはWebアプリケーション開発に新しいツールを提供した。
8. Apple iPhone
2009年、日本はiPhoneユーザの増加率が世界中でもっとも多い国となった。iPhone 3GSが発表されてから日本でもユーザが急増。イノベーティブな発表の多くがiPhoneに関連したものになるなど、現在もっともホットなデバイスとなっている。また市場規模も大きく成長。ソフトウェア市場や広告市場として一大ブランドを築き上げた。キャリアがドコモやauであればすぐにでもiPhoneに移るのにという声も多く、日本では今後も高い成長をみせる可能性がある。
エンタープライズでもiPhoneの注目度は高く、業務で利用したいという声も多い。法人契約の場合に発生するディスカウントがiPhoneにはないため、料金上の障壁は多いが、それを補って余る利便性がある。iPhoneがもたらしたのはライフスタイルの変化であり、iPhoneを使いこなせるユーザはもうもとの携帯には戻れなくなった。
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9. Amazon Kindle
日本でのサービスはローミングで利用する以外の方法は提供されていないが、ライフスタイルを大きく変えたデバイスとしてAmazonのKindleを紹介しておきたい。渡日してくるデベロッパが口を揃えてKindleは便利だと自慢する。これまで紙媒体で読んでいた新聞が、自動的にKindleに配信されてくる。新聞を読むのもKindle、雑誌を読むのもKindle、書籍を読むのもKindleだ。これなしには立ち行かないというわけだ。
iPhoneは便利なデバイスだが、大量のテキストを読むときの快適さはKindleにはかなわない。しかもダウンロードする必要がなく、自動でデバイスに入ってくるとなれば、これは便利この上ない。ローミングで米国のKindleサービスを利用するという利用方法を除いて、日本ではKindleサービスは提供されていないが、今後日本でも普及するデバイスとしてもっともありえそうなのがKindleだ。または、サービスしだいといえるが、日本メーカが作るKindleと同じようなデバイスが普及する可能性もある。
10. Twitter
Twitterの注目度は2009年に入ってから急増した。140文字のメッセージングツールTwitterは関係者には以前から注目度が高かったが、今年に入ってからコンシューマ層へもエンタープライズ層にも一気に浸透したことになる。
Twitterの活用方法は実にさまざまだ。コミュニケーションツールとしての利用や、調査対象となるメディアとしての扱い、広告媒体やサービス提供のためのメディアととらえている企業もある。インターネット以外のマスメディアでもTwitterという言葉が使われる機会が増えている。