凸版印刷は、透明アモルファス酸化物半導体を用い、TFTの製造工程を従来の研究成果に比べ、100℃以上低い270℃で試作することに成功、E Ink電子ペーパーを駆動することに成功したと発表した。

E Ink電子ペーパーを駆動させた試作品

今回の試作では、酸化物半導体層を塗布型で形成、その他の層を一般的なTFTと同様の製造工程で実現した。透明アモルファス酸化物半導体の素材は材料メーカーである独Evonik Industriesの戦略的研究開発部署「ク レアビス テクノロジーズ%イノベーション」が開発、共同で改良、酸化物半導体を塗布する工程における湿度や温度などの条件を制御することで、製作工程温度を下げることに成功した。

これにより、TFTの基材として、従来のガラス素材ではなく、樹脂(耐熱フィルム)の使用が可能となり、フレキシブルな次世代ディスプレイの実現など、適用範囲が広がる可能性が高まった。

また、塗布型の工程(スピンコート塗布で成膜し、フォトリソ法でパターニング)により、一般的な真空成膜による工程と比較し、生産設備などを簡素化できるほか、生産効率の向上も見込め、低コスト化を進めることが可能となるという。

試作品の仕様は、ディスプレイサイズが対角2インチ(800×600)、基材はガラスを使用しており、ガラス基材上に作製されたTFTの移動度は0.5cm2/Vs以上、オン・オフ比は105以上(一般的なa-Si TFTと同等の特性)となっている。

なお、凸版では今後、薄型、軽量でフレキシブルなディスプレイの実用化を目標に簡素化・低コスト化へ向けたTFT の研究開発を強化するとともに、ディスプレイ関連事業で協業関係にあるカシオ計算機のもつ高いa-Si TFT技術や駆動技術との融合・連携を図り、製造プロセスの早期確立を目指すとしている。