ベルギーの研究機関IMECとオランダの露光装置ベンダASML、米国の半導体製造装置ベンダApplied Materials(AMAT)の共同研究チームは、EUV(Extreme Ultra Violet)露光技術を導入して22nm世代の高密度SRAMセルを試作した結果をIEDM 2009で発表した(講演番号12.4)。
EUV露光技術は、波長が13.5nmと極めて短い軟X線を光源とする露光技術で、現在の半導体量産用露光技術で最先端のArF液浸露光をはるかに超える微細な加工を可能にする。ただしEUV露光技術はまったく新しい技術なので、リソグラフィを支える各種の要素技術も開発しなければならない。そこでASMLがEUV露光装置のデモ機「ADT(Alpha demo tool)」を開発し、IMECに納品した。IMECによってADTは評価を受け、EUV露光技術の開発に利用されてきた。ADTは量産用リソグラフィ技術を開発するための貴重なツールでもある。
昨年のIEDM 2008でIMECを中心とする研究グループは、EUV露光を含めたプロセス技術によって32nm世代のSRAMセルを試作してみせた。今回はプロセス技術を改良するとともにEUV露光の適用範囲を広げ、22nm世代のより小さなSRAMを試作した。
昨年開催されたIEDM 2008で発表したSRAMセルの面積は0.186μm2。静的雑音余裕(SNM)は電源電圧が1.0Vのときに139mVである。
それに対して今回のIEDM 2009で発表したSRAMセルの面積は0.099μm2であり、半分近くに小さくなった。SNMは電源電圧が1.0Vのときにおよそ140mV、電源電圧が0.4Vのときにおよそ40mVである。0.4Vと低い電源電圧でも、それなりに動いていることが分かる。
今回の試作ではリソグラフィ技術を一段と進化させたことが小さなSRAMの実現に寄与した。トランジスタは昨年も今年と同じフィンFETなのだが、昨年がゲート長45nm、ゲートピッチ150nm、フィン幅20nm、フィンピッチ124nmであったのに対し、今年はゲート長40nm、ゲートピッチ110nm、フィン幅12nm、フィンピッチ90nmといずれも短くなった。トランジスタ回りの露光技術には昨年も今年もArF液浸露光を使用している。昨年は開口数(NA)が0.93であったのに対し、今年はNAを1.35に高めるとともに2重露光技術を採用して解像度を高めた。
SRAMセルの製造工程(IEDMの論文集から抜粋) |
SRAMセルとフィンの電子顕微鏡写真。ゲートは高誘電率膜/金属ゲート(HKMG)にpoly-SiゲートとNiPtSiシリサイドを重ねたもの(IEDMのプレスキットから抜粋) |
EUV露光は、コンタクトホールと第1金属配線(M1)のパターン形成に採用した。昨年は直径55nmのコンタクトホール形成にEUV露光を利用していた。今年は微細な金属配線にも採用したことになる。コンタクトホールの直径は50nmと40nmであり、昨年よりも小さなコンタクトを形成した。なおEUV露光のNAは0.25で、昨年の発表と同じである。
第1金属配線(M1)のパターン形成工程は、コンタクトホール形成に続くコンタクト埋め込み(タングステン埋め込み)の直後にくる。したがってEUV露光での重ね合わせ精度が試される。M1のスペースは46nmとかなり狭い。試作では、良好な重ね合わせ精度を得られた。
試作したSRAMセル(6トランジスタ・セル)の寸法は0.22μm×0.45μm。ゆっくりとした動作(静特性)は確認済みである。